昨年、コスモバルク記念から重賞5連勝で道営記念を制し、絶対王者としての地位を確立したベルピット。今年の始動戦であるドウデュース・プレミアムはよもやの2着だったが、これは”白い悪魔”とも称される門別特有の濃霧に幻惑され、前との距離感を失ってしまう誤算があった。しかしその後の圧倒的な重賞4連勝によって、当時の不安は完全に霧散している。むしろ、抜け出してから遊ぶような面が解消され、ゴールまでストライドを乱さず走り切るようになった今年の姿は、昨年以上の強さを感じさせる。ここまでの重賞勝利数は14。これはホッカイドウ競馬の最多重賞勝利記録タイである。記録更新はもう目の前だ。

　既にベルピットと対戦し、大きく水を開けられている馬がほとんどというメンバーだが、わずかながらまだ接近の可能性を残した馬が2頭いる。

　1頭は、先のドウデュース・プレミアムの勝ち馬パッションクライだ。前述の通り、そのレースは濃霧の影響が大きく、この馬はそれを味方につけた格好だった。ただ、ここ2戦の連勝内容には、ベルピットに勝利したことも、あながち偶然によるものだけではなかったかもしれないと、そう思わせる覚醒の相がある。もともと、3歳時には北海優駿を制したこの世代のトップホース。ホッカイドウ競馬を背負う存在になる素養は十分に備えた馬である。しかし懸念点は、ここ2戦とも桑村騎手が手綱を取っており、その充実ぶりを体感していること。つまり、今回ベルピットに騎乗する桑村騎手は、この馬を楽に逃がすことはしないはずである。絶対王者の重圧を一身に受ける形に耐えうるかどうか、これは非常に難しい問題だ。

　もう1頭は、今年の3歳三冠馬、ソルジャーフィルドである。輸送も挟んでハードな競馬をしたジャパンダートクラシックから中3週だから、疲労回復が最優先ではある。ただ、JRAの強豪を相手に、いつもよりポジションを上げて真っ向勝負を挑んだ経験は、必ずやさらなる成長を促すはずだ。門別2000mはこの馬のベストと言える舞台。また、ベルピットは自分より後ろの馬を意識して競馬はしないだろう。そこに一瞬の好機が生まれるかもしれない。ベルピットの仕掛けについていくのは至難の業だが、それが叶えば一縷の望みはある。

　他では、昨年2着のアナザートゥルース、堅実無比なニシケンボブ、自在性のあるプラセボなどが相手候補だ。全人馬の無事を願いつつ、頂上決戦を心から楽しみたいと思う。

(文：競馬ブック・板垣祐介)

ホッカイドウ競馬特集ページはこちら！