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乗り続けた男

  • 2013年12月23日(月) 18時53分
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有馬記念では、オルフェーヴルの鞍上に池添騎手の姿があった。
彼が再びオルフェに乗ることに、いろいろと外野の雑音も聞こえていた。

昨年はいろいろあったものの、彼はオルフェの主戦騎手として宝塚記念まで5つのG1で結果をだした。
誰も凱旋門賞の鞍上に彼の姿がないことなど想像もしていなかったと思う。
しかし「ロンシャンに慣れている現地の騎手を」という理由で、スミヨン騎手が鞍上に指名されることになる。
オルフェは、それでも凱旋門賞を勝つことはできなかった。
誰もが勝ったと思った瞬間に、ファンは悪夢としか思えない光景を見たのだ。
名手スミヨンであっても、彼の個性を把握しきれていなかったのが敗因だったかも知れない。
凱旋門制覇の夢は翌年へと持ち越される。

年が明けて春シーズン。
もうオルフェの手綱を誰にも渡したくないと決意した彼は、フランス競馬の経験を積むために約2ヶ月間の予定で現地へ渡る。
しかし、数週間後に陣営から発表されたのは「今年もスミヨンで」というものだった。
目的を失った彼は遠征を打ち切り帰国する。
そして、オルフェとスミヨンのコンビは今年も凱旋門賞を勝てなかった。

レース後には有馬で引退と発表され、鞍上には再び池添が配された。
「さすがにこれは酷い仕打ちだ。断っちまえ」
私もそんなふうに考えたひとりだった。

しかし有馬記念を観て、彼がなぜオルフェの鞍上に戻る選択をしたのかが分かった。
四角から積極的に行ったあの競馬は、決して『ただ勝つためだけ』のレース運びでは無い。
あれは間違いなく『ちぎって勝つ』ためのレースの仕方だ。
彼だけが知っているオルフェーヴルの真の強さをファンに見せるために彼はプライドを捨て鞍上に戻ったのだろう。

その結果、我々ファンは素晴らしい有馬記念を観ることができた。
競馬ファンの一人として、私はオルフェに乗り続けてくれた池添騎手に心から感謝したい。

もし、外国人ジョッキーが乗っても、オルフェは有馬を勝っていただろう。
着差は3馬身くらいだろうか。完勝には違いない。
しかし、他の騎手では『オルフェで勝つ』以上の仕事ができたかどうか疑問に思う。
8馬身という着差は、その強さを誰よりも知っていた池添騎手だからこそ出来たパフォーマンスではないだろうか。

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ケイバにどっぷりの人です。気の向くままにコラムというか、思ったことを書き綴ることがあります。現在、ブログは休眠中。しばらくは、ここのコラムを使って忘れた頃に書き綴る予定です。ブログ...

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