◇第69回クイーンステークス(G3・1日・函館・芝1800メートル)
「この馬は頭がいい」という評は、ほとんどの場合褒め言葉だ。けれど、まれにそれが競馬で足を引っ張ってしまうこともある。競馬で恐い目に遭ったのを覚えていて体が縮こまって突然走るのをやめてしまうようなケースだ。
クイーンSに臨むウインマイティーは、カメラを向けられると足を止めてポーズまで取るお利口さん。オークスでデアリングタクトから半馬身とクビ差に迫る3着に踏ん張ったが、以降は低迷している。
陣営の総括は明確だ。直近2戦の大敗はどちらも勝負どころで突然手応えを失っての後退。秋華賞の3角過ぎで両側からはさまれて恐い思いをした“トラウマ”が尾を引いているに違いない。五十嵐助手が説明する。「本当に気持ちの問題だけだね。秋華賞では3角過ぎに内外からぶつけられた。そこから周りの馬を気にするようになって、運動でも周りに反応して尻尾を振ったりしていたの」
そこで思い切って春は全休。「地力は優に重賞級。嫌な記憶を振り払ってくれれば…」という願いは、どうやら実を結んだようだ。同助手の言葉は明るい。「入厩して最初の1本で確かめたくて。他厩舎に誘導してくれる馬がいたので後ろにつけてみたんだけど、やめるような素振りもなかった。27日の追い切りもたまたま前に馬がいたので近いところによってみたんです。気にしてる様子はもうなかったですね」。
都合よく忘れてくれたのか、あるいは彼女の中で恐い記憶を昇華して乗り越えたのか。いずれにしても、勝負どころでもやめずに走りきるメドは立った。
仕上がりにも抜かりはない。「牧場でよく乗ってくれて入厩当初から仕上がっていました。僕らは維持するだけ。オークスを10としたら、9はあります。張りもいいし、馬は本当にいい。最終的にはメンタル。そこだけです」と同助手。彼女の内面が、本当にひと皮むけていれば、大激変の復活があるかもしれない。
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