藤沢和雄調教師(70)。35年という調教師人生で、偉大な記録を打ち立てるまでに感じてきたことや調教、競馬界の変化などを語ってもらった。(聞き手・東佑介)
―来年2月に定年を迎えるが、調教師になったころと今との違いは
藤沢和師「競馬を取り巻く環境は変わったね。ファン層も年齢層も変わってきてるように感じるし、ウマ娘(スマホゲーム)なんかいい例だよね。パソコンやスマホなどのバーチャルな世界が増えてきている。そんな時代に昭和の生まれの俺は実際の馬を相手に仕事をやっているわけだけど、(現実の世界というか)自然界から離れている人が競馬ファンに多いように思うね。そういうファンにも実際の競馬の魅力を伝えていかないといけないと思っているよ」
―時代の変化は調教にも
「もう昭和の調教は古いよね。スポーツ界全体がそうなってきたように、競馬も調教技術がどんどん変わってきたし、まず馬を取り扱っている人たちの気持ちが変わってきたね。昔のスパルタみたいな昭和のフレーズははやらなくなって、(馬にとって)楽しんでやるっていうふうになってきた。今は世界的にもそうなってきてるね。だから馬が楽しく訓練できて、気持ちがへこまないようにやっている。そうじゃないと、いい馬が育たないということも少しずつ分かってきたからね。喜んで調教にきたり、厩舎にいることが苦痛にならないように調教しようと心掛けてきたよ」
―馬優先が第一の先生でも最初はスパルタだった
「やっぱり調教師になったばかりのころはスパルタだったね。昭和の根性論だから、ど根性でという時代もあった。でも一生懸命に鍛えようとハードに調教しても、しなくても馬の能力は一緒なんだよ。こっちは不安だから目いっぱいやっちゃうけど、それでいい結果が出たとしてもハードにやったからじゃなくて、やらなくても結果は同じなんだよ。馬はすごく精神的に影響されるから、ストレスをかけた馬は引退した後でお父さん、お母さんになっても良くなくて、子どもが育たないみたいだね」
―最後の秋戦線に向けた意気込みは
「最後だからどうこうっていうのはない。馬は短期間で良くなったり悪くなったりしないからね。そういう過程をやらせてもらっているだけで、定年する来年の2月で完結することは何もないよ。永遠に過程だから。定年しても馬たちには何の影響もないようにしなきゃいけない」
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