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<浦河 馬と農にひかれて> 田舎暮らし

  • 2021年09月29日(水) 20時53分
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 例年になく猛暑の日が続いた8月中旬。日高管内浦河町西幌別の軽種馬牧場の放牧地に、小竹真理子さんの声が響いた。

 「ラムちゃん!」馬柵越しに呼ぶと、元競走馬の「ユキノラムセス」がゆっくりと近づいてくる。小竹さんは優しい目で見つめ、そっと顔の周りをなでた。

 小竹さんはフリーの通訳者。東京都内で働き、週末に長野県軽井沢町で乗馬を楽しむ生活を送っていた。新型コロナウイルスの感染拡大で在宅勤務になったのを機に、浦河町での体験移住を経て、今年1月、町内へ移り住んだ。愛馬を預けることができ、馬と牧場の風景を見て仕事ができる。その条件を全て満たした。

 ユキノラムセスを預かるのは、町乗馬公園に近い牧場。園内で小竹さんは乗馬を楽しみ、町が公園の一角に設けたテレワーク用スペースで仕事をするのが日課だ。「通訳の合間に馬を見ることもできる。目の前にいるからこそ、違う世界に来たと思える」と幸せそう。

 「馬」に魅せられて馬産地へ移住した人は多い。町西舎の観光宿泊施設「うらかわ優駿ビレッジアエル」で乗馬体験を担当する乗馬課の職員6人のうち、4人がIターン、Uターン組だ。

 神奈川の警察官だった杉山明広さん(68)は、10年目を迎えた古参移住者。休日には、同管内新ひだか町にある友人の乗馬施設で、自身のばん馬にまたがる。「大自然でスローワーク。馬のために日々頑張っている」と笑う。

 移住者がいる一方、浦河町の人口減少は止まらない。住民基本台帳によると、ピークの1960年には2万1915人に達したが、昨年末に1万2千人を割った。自然減に加え、進学や就職による社会減での流出も止まらず、町は「人口ビジョン」の中で町独自の推計として2035年に1万人を割り込むとする。

 池田拓町長は「人口が減るのは、もうどうしようもない」と話し、減少曲線を緩やかにすることに重点を置く。昨年8月、商工観光課内に「移住交流テレワーク誘致推進室」を新設し、移住や交流人口の増加に力を入れる体制を構築。馬を身近に感じながら仕事のできる乗馬公園やアエルの再現厩舎内に、テレワーク用のスペースも整備した。

 移住者は05〜19年度の間で231人だったが、20年度は40人に上り、成果も見えている。「『馬』を生かし、夏は浦河、冬は本州など2地域居住という方法もある。田舎暮らしに軸足を置く人に多様な方法を提案していきたい」
ネタ元のURL
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/588940?pu

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