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津波で失った馬39頭のため 再建10年

  • 2021年10月22日(金) 20時42分
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 宮城県亘理町の山あいにある乗馬クラブ「ベルステーブル」。玄関を入ると、39頭の馬と3匹の犬の名が刻まれたプレートが出迎える。東日本大震災が発生した2011年3月11日、同県名取市の厩舎を襲った津波で失われた命だ。「馬たちに教えられてきたことを、無にしたくなかった」。ベルステーブル代表の鈴木嘉憲さん(40)は、厩舎再建の道のりをこう振り返る。【藤倉聡子】

 鈴木さんは名取市の乗馬クラブ「ベルシーサイドファーム」を受け継ぎ、震災時はオーナーから任された「預託馬」を中心に41頭を飼養していた。海岸からほど近く、仙台空港の徒歩圏内にあった厩舎には、地震からおよそ1時間後に津波が到達したという。

 鈴木さんと家族、スタッフは事前に避難できたが、馬はどうすることもできなかった。また、避難の途中で引き返したスタッフ1人が行方不明になり、今も見つかっていない。地震から2日後、ようやく水が引いて戻ることができたが、残っていたのは厩舎の基礎だけだった。

 その日から「馬を捜し、オーナーに報告することが仕事になった」。行方不明者を捜索していた自衛隊が、馬を見つけた場所に目印の旗を立て協力してくれた。怪我をしながらも奇跡的に生き残った2頭と再会を果たしたが、残る39頭は人家や車両の間、瓦礫の中、仙台空港の滑走路などで命を落としていた。弟で同じく馬術選手、装蹄師の智明さんとともに、全馬を捜し出すのに39日間かかった。

 捜索を終えた時、妻の実家がある大阪に移る選択肢もあった。東北高を卒業後、大阪府和泉市の杉谷乗馬クラブの研修生として学んだ縁もあった。だが「ここから立ち去ることを自分に許せない気がした」

  震災を生き延びたうちのアドマイヤチャンプなど自分の馬2頭からスタートし、徐々に預託馬を増やした。次の目標は「この先10年間の評価でお金を借り、自分の土地で理想の厩舎をつくること」。その念願が形になったのは20年3月。亘理町の知人の土地を譲り受け、自らもブルドーザーやパワーショベルに乗って約3500坪を整備し、現在の施設をオープンした。預託馬36頭など42頭を飼養し、鈴木さんのほか常勤スタッフ3人、非常勤2人という陣容だ。

 鈴木さんの描く理想は「馬と人が幸せに過ごせること」。預託とトレーニング専門で体験乗馬などは行わないため、馬にとっては規則正しく落ち着いた時間が流れている。
ネタ元のURL
https://mainichi.jp/articles/20211020/k00/00m/050/067000c

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