浦河町は古くから競走馬を育ててきたことから「優駿のふるさと」と言われる。町内には約300の牧場があり、毎年数千頭のサラブレッドが競走馬として巣立っていく。通称サラブレッドロードと呼ばれる見渡す限りの大牧場地帯には、熱心なファンが足を運んでいる。
うらかわ優駿ビレッジAERUにも、毎年、あの名馬に一目会いたいと毎年全国から多くのファンが訪れるという。
彼らのお目当ての馬こそ、1993年の日本ダービーを制したウイニングチケットだ。
11年間の種牡馬生活を引退し、うらかわ優駿ビレッジAERUで功労馬として余生を穏やかに過ごすチケットは、今年3月で29歳になった。馬の平均寿命はとうに超え、人間にすれば100歳の域に達している。
しかし、その馬体は「長老」と呼ぶには少し違和感がある。身体はきゅっと引き締まり、背中の落ち窪みもない。毛並はつやつや。担当する乗馬課の太田篤志マネージャーも「こんなに若々しい29歳は見たことがありません」と驚くほど若々しい。
午前7時すこし前。厩舎側のスペースに車を駐車すると、音に反応したチケットが、早速、馬房から顔をのぞかせてくれた。スタッフに導かれ、日々のルーティーンである放牧へと向かう。
実は撮影のため、チケットには厩舎から放牧地の入り口まで到着して、また、厩舎の方へと戻る……という動作を何度か繰り返してもらったのだが、嫌がることもなく、暴れることもなく、機嫌よく歩いてくれた。
ウイニングチケットを訪ねる前に、人馬一体で念願のダービーを制した柴田政人からも盟友・チケットへのメッセージを預かった。
「ゆっくり余生を送って、長生きしてほしい」
実は9年前の2010年7月、函館競馬場で16年ぶりの再会を果たした柴田とチケット。当時、久しぶりに会ったチケットを見た柴田は、「若々しくて、20歳になったような感じがしませんでした。まだピカピカ黒光りしていて、体にハリがあって」と元気な姿に目を細めていた。
あれから9年。チケットはいま生きているダービー馬としては国内最高齢となった。大自然のなかでのびのびと過ごしているチケットと今年2月に調教師を定年引退した柴田政人。次に2人が対面したときは、お互いにどんな会話をするのだろうか。
「(チケットが)元気な間にぜひ会いに来てほしいですね」(太田さん)
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