▲オークス馬ミッキークイーン、二冠への手応えを指揮官が語る
オークスを制覇し、3歳牝馬の頂点に立ったミッキークイーン。池江泰寿厩舎に牝馬初GIをもたらしたが、それは桜花賞の除外を経てオーナー・調教師の思いが積み重なってたどり着いたものだった。ミッキークイーンによって今春、もたらされた厩舎の変化や、苦悩と喜び、そして最後の一冠にかける思いを池江泰寿調教師に伺った。
(取材・文:大恵陽子)
喜びのGI、絶望の新馬戦
五月晴れの府中。世代女王を決める第76回優駿牝馬は、ゴール前勢いよく伸びてきたミッキークイーンがティアラを手にした。
桜花賞を3分の2の抽選で除外になり、同日のオープン特別・忘れな草賞勝利を経ての戴冠を、管理する池江泰寿調教師はこう振り返る。
「気持ち良かったですね。直線半ば、坂を駆け上がったあたりから前を行く2頭と勢いが違ったので、勝てるんじゃないかと思いました」オークスを制したミッキークイーン、鞍上の浜中騎手も喜びを爆発させた(撮影:下野雄規)
会心の勝利とともに語られるのは、一冠目・桜花賞の無念だった。
「オーナーが宝塚市出身で、桜花賞への思い入れがすごく強いんです。僕自身も桜花賞はとても獲りたいレースだったんですが、クイーンCを取りこぼしてしまって…。トライアルを使うか、放牧に出して馬体を立て直すか葛藤がありました。でも、馬自身はデビュー当初からオークス向きだと思っていたので、いい状態でオークスを迎えられるようオーナーと相談し、後者を選択しました」 ミッキークイーンは2013年セレクトセール1歳市場で1億円で取引された。牝馬としてはこの年の同部門2番目の高値だった。
「値段に見合う血統背景ですし、この馬のすごい点は柔軟性や身のこなしでした。正直、立ち姿だけではこの馬を凌ぐ馬は何頭かいました。でも、動かすとダントツに良かったんです。数年に1頭ですね」 大きな期待を背に、12月7日、阪神・芝1400mで新馬戦を迎えた。
ワンテンポ遅れたスタートから直線は鋭く追い込むも、勝ち馬ジルダに1/2馬身届かずの2着。予想外の結果に、池江師は当時の心境をこう語った。
「絶望でした。負けることがないと思っていました。レースでそんな風に自信を持てる馬は数年に1回で、こんな気持ちはオルフェーヴルの新馬戦以来でしたね」