▲大事に育ててきたディサイファとのGI、勝機について四位騎手が本音を激白
目下3連勝中のラブリーデイ、ヤンチャな逃げ馬エイシンヒカリ、オールカマーで男馬を一蹴したショウナンパンドラなど、役者がそろった感のある天皇賞(秋)。各陣営とも、まさに虎視眈々といったところだが、小島太厩舎が送り出すディサイファもその1頭。手綱を取るのは、名手・四位洋文。ディサイファとの軌跡を振り返りながら、大一番に向けた“色気”を語る。(取材・文:不破由妃子)
無理使いしなかったことが大きい
「この馬と一緒にもっと上の舞台を目指したい」
四位洋文がそう口にしたのは、2014年1月、中山金杯3着時のこと。コンビを組んで6戦目、ディサイファにとっては前走福島記念(4着)に続く二度目の重賞挑戦だった。ご存じ通り、四位といえば、ダービーのトップゴールを二度も味わっている名手。いわく「ダービーを2つも勝たせてもらうと、簡単に“この馬、走るね”なんて言えなくなる」そうで、必然的に馬への評価は辛口だ。そんな感覚の肥えた男の言葉だけに、先の言葉には妙に重みがあった。
初騎乗は2013年5月25日、東京芝1800mの4歳上500万。欅S出走のアドマイヤロイヤルに騎乗するための東上だったが、そこにかねてより四位を重用する小島太師から騎乗依頼が舞い込んだかたちだ。この時点でのディサイファは、6人のジョッキーが手綱を取り、12戦1勝。500万での足踏みが続いていた。
「それまでに乗ったジョッキーたちから『いい馬だよ』とは聞いていたんだけど、助手さんいわく『みんな手応えに騙されている』と。あまりにも道中の手応えがいいので、後ろからいっても、直線でちょっと仕掛ければぶち抜いて勝つんじゃないかっていうね。実際、返し馬に行ったら、“なるほど。これは騙されるわ”と思った(笑)。いかにも終いが切れる馬のように感じたからね。でも、そういうイメージで乗ったらダメなんだなと思って、徐々にスピードに乗せていく競馬をしてね」
道中は中団からジックリと。4コーナー手前から徐々にエンジンを掛けはじめ、坂を上がってからは、文字通り弾けた。それまで高い能力がありながら、好位につけても後方からいっても、もう一歩が足りなかった馬。しかし、この一戦を機に“何か”が変わった。
「後々わかったことだけど、結局は馬ごみが嫌だったんだろうね。前に馬を置かずに、あくまでも自分のペースで上がっていきたい馬なんだなって。“馬のなかに入ってしまうと、いざ“行け!”って合図を出してもなかなか行かない。でも、前に馬がいない見通しがいい状態で合図を出すと、スパーン!と伸びる”。そういうイメージで乗ったら、本当にその通りだった。評判通り、いい馬だなと思ったし、なんていうのか…奥の深さを感じたね」
ちなみに、「今のディサイファは?」と聞くと、「安心してください、(前に馬を)置いてますよ(笑)」と即答。絶妙なタイミングでこの返し。四位さん、アナタはやっぱりおもしろい!