▲角居厩舎所属の森裕太朗騎手 (C)netkeiba.com
今月いっぱいで引退を迎える角居調教師の活躍をたどる特集。昨日からスタートした第二部では、角居調教師に縁の深い競馬関係者6名が登場し、“角居勝彦のスゴさ”を証言します。
数多の名馬を育ててきたトップトレーナーである一方、「人づくり」にも尽力してきた角居調教師。今回登場する森裕太朗騎手も「僕を救い上げて、ジョッキーにしてくださいました」と感謝し、「ジョッキーは最低4回、『ありがとう』を言わなきゃいけない」と教えられたとも言います。その成長ぶりや心境の変化をたどると、角居調教師の「人を育てる」というスゴさ、影響力の大きさが見えてきます。
(取材・文=大恵陽子)
※このインタビューは電話取材で実施しました。
【第一部】名トレーナー誕生秘話『角居勝彦物語』(2/11〜2/16)
【第二部】関係者たちが証言“角居勝彦のスゴさ”(2/17〜2/24)
【第三部】引退直前、角居調教師からのラストメッセージ(2/25〜2/26)
「気持ちの面で勝つ競馬をしていない」師匠からの指摘
森騎手がデビューしたのは2016年、鈴木孝志厩舎からだった。「鈴木先生は僕をジョッキーになるまで育てていただいて感謝しています」と、競馬界に血縁者のいない森騎手にとって大きな存在だった。
その後フリーになり、2019年中京記念ではクリノガウディーに騎乗し、ハナ差2着など重賞初制覇まで手が届きかけた一方、勝利数はデビュー2年目の23勝を頂点に少しずつ下降線をたどっていた。そんな状況の昨年4月、森騎手は角居厩舎の門戸を叩いた。
角居調教師と接する中で印象的な出来事をこう振り返る。
「自分が乗ったレースをいくつかピックアップして毎週火曜日に見ていただくんですけど、『気持ちの面で勝つ競馬をしていない』と言われたことがありました。僕は後方からの競馬が多いイメージを持っている人も多いと思うんですけど、それだと展開任せになってしまいます。先行して自分で流れをつくるような競馬をしないと、人気馬に乗った時に勝てるレースも勝てない、と。そこから見直して、なるべく積極的な競馬をしようと心がけるようになりました」
後方から脚を余して負けるのと、普段より1列前で競馬をして負けるのとでは、見ている馬主や調教師が抱く感情も違うだろう。ジョッキーは人気商売の側面も持つ。どのように見られているか、を伝えたかったのだろう。
しかし、基本的なことは教えつつも、「自分で考えること」にも重点を置いた。