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2023冬季繁殖馬セール

  • 2023年01月26日(木) 18時00分

大注目シゲルピンクダイヤが登場


 10年に一度という大寒波の襲来で、日高地方もこの冬一番の気温の低下となった1月25日、恒例の(株)ジェイエス主催「冬季繁殖馬セール」が北海道市場にて開催された。

生産地便り

冬季繁殖馬セール会場風景


 開場午後1時、セリ開始は午後2時。名簿上では32頭の上場予定場が掲載されていたが、このうち7頭が欠場となって、実際に上場されたのは25頭(受胎馬13頭、空胎馬12頭)という少なさであった。もともと冬季繁殖馬セールは、秋季の同セールと比べると、厳冬期の開催という事情もあって頭数が揃いにくく、前年の当セールでも上場頭数は僅か22頭にとどまっていた。

 しかし、今年は、締め切り後に追加で上場申し込みのあった5頭が、セールを一気に盛り上げる形となり、空前の売却率と売り上げを記録する話題の多いセールとなった。

 すでに各報道で広く伝えられているように、今回の繁殖馬セールで最も注目されたのは、13番シゲルピンクダイヤ(7歳)である。周知のように、シゲルピンクダイヤは中央1勝ながら、桜花賞2着、秋華賞3着などGI戦線で活躍し、多くのファンに知られた名馬で、昨年より繁殖入りし、モーリスを交配され本年4月8日出産予定となっている。現役時代の獲得賞金は1億6027万円。このクラスの大物牝馬(しかも若く将来性が高い)が、繁殖セールに登場することは稀で、セリ開始前から、待機馬房には多くの購買関係者が次々に訪れ、シゲルピンクダイヤに熱い視線を送っていた。

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冬季繁殖馬セール13番シゲルピンクダイヤ(7歳)


 1番ドラゴンホマレから始まったセールは、11番アリアンナまで100万円-200万円台の比較的地味な落札価格で推移し、淡々と進行したが、追加名簿の別冊子(5頭掲載)の上場馬12番グログランが上場されると、会場内は明らかに活気が漲り、価格もグンと上昇し始めた。グログランは8歳栗毛で中央2勝馬。マジェスティックウォリアーを受胎しており、出産予定日は3月3日。1210万円(税込み)で増田雄一氏が落札した。

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冬季繁殖馬セール12番グログラン(8歳)


 その次に登場したのが13番シゲルピンクダイヤである。実績は申し分なく、セリが始まるとともに価格はどんどん急上昇して行き、いつの間にかついに1億円の声が聞こえた。

 それでもなお、セリは続けられ、さらにヒートアップして行く。場内の電光表示板にはこれまで見たことのないような色で価格が表示される。ついに1億5000万円まで到達し、そこでようやく決着がついた。取引価格は1億6500万円。販売者は森中啓子氏、落札者は仙波りり子氏、であった。

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取引価格1億6500万円で落札された13番シゲルピンクダイヤ(7歳)



 故・森中蕃氏の所有馬がこの後も、14番シゲルオトメザ(6歳栗毛、中央3勝、モーリスを受胎)、15番シゲルゴホウサイ(11歳鹿毛、中央3勝、ヘニーヒューズを受胎)、16番シゲルチャグチャグ(11歳鹿毛、中央3勝、ニホンピロアワーズを受胎)と続き、それぞれ、2145万円、1540万円、1210万円で落札された。

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冬季繁殖馬セール14番シゲルオトメザ(6歳)


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冬季繁殖馬セール15番シゲルゴホウサイ(11歳)


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冬季繁殖馬セール16番シゲルチャグチャグ(11歳)


 受胎馬はここまでで、以後は、番号が一気に飛び、100番台に移る。101番-108番は不受胎馬(もしくは前年種付けせず、の空胎馬)で、201番-209番が未供用馬となる。

 未供用馬の中では、206番バトーデュシエルの3630万円が最も高かった。父ロードカナロア、母エルダンジュ、母の父サンデーサイレンスという血統の6歳鹿毛馬で、函館道新スポーツ杯など中央3勝2着3回3着4回の成績を残しており、5263万円の獲得賞金という実績馬である。販売者は山口功一郎氏、落札者はノーザンファーム。

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3630万円で取引された206番バトーデュシエル(6歳)


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冬季繁殖馬セールで3630万円で取引された206番バトーデュシエル


 207番エピローグ(7歳鹿毛馬、父ハービンジャー、母ルイーズ、母の父ロージズインメイ、中央3勝、獲得賞金5407万円)は、1430万円で落札された。販売者は藤田好紀氏、落札者はポリッシュホースメイト。

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1430万円で落札された207番エピローグ(7歳)


 終わってみれば、25頭中23頭が落札され、売却率は92.00%に達し、売却総額も、税込み3億61万9000円と、冬季繁殖馬セール史上最高の数字を叩き出す結果となった。このうちの70%強に相当する2億1395万円が、森中啓子氏名義の上場馬5頭による売り上げである。

 さすがにシゲルピンクダイヤほどの馬はまず普通は出てこないので、これはあくまで別格、異例の存在だったとは思うが、その他でも、今回改めて、ある程度以上の競走成績の裏付けのある上場馬は高額になることを思い知らされた。本文中で紹介した上場馬は、どれも中央での実績を残す馬ばかりで、だからこそ、購買者の注目度も増すということである。

 その意味では、上場頭数こそ少なかったとはいえ、今年の冬季繁殖馬セールは、ひじょうに見応えのある注目セールであったと言えよう。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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