出世馬を見抜くことはできるのか

　POG(ペーパーオーナーゲーム)関連本の市場は相変わらず堅調なようで、生産地では、3月上旬より各育成牧場で取材がスタートしている。中央競馬の新馬戦がダービーの翌週、6月初旬に始まるのに合わせ、関連本の発刊時期が以前より早まっており、それに応じて各媒体の取材時期もまた前倒しになっている。

　今を去る十数年前には、取材が始まるのが3月下旬で、4月に入ってからが最盛期であった。関連本の発売は、5月の大型連休が終わってからだったと記憶している。

　しかし、今は、連休前に発売する媒体が大半であり、そこから逆算すると、取材時期も従来と比較すれば約1ヵ月は早まったことになる。

　ただ、これには、取材を受けて頂く各育成牧場のご協力があればこそ成立するわけで、それに加えて、天候の善し悪しにも左右される。

　まず、主要な媒体の編集者たちによって、2月のうちからおおよその日程が決められていく。今年の場合は、3月8日(水)の小国ステーブル(新ひだか町)を皮切りに、10日(金)が加藤ステーブル、12日(日)社台ファーム、14日(火)千代田牧場、ダーレー・ジャパン、15日(水)ビッグレッドファーム、16日(木)ノーザンファーム、コスモビューファーム、西山牧場と予定が組まれていた。

　例年と比較すると今年の3月は比較的好天に恵まれて、概ね順調に日程を消化できているが、天候悪化の日があれば、もちろん撮影は中止になり、その分の日程が後ろにずれることになる。今年は、16日(木)が雨天になってしまい、西山牧場の取材が20日(月)に変更された。

　通常、月曜日は、中央の調教師などが育成牧場を訪れることが多いため、どこの育成牧場でも、来客対応に充てる日となっていて、当然ながらPOG取材には対応して頂けない。だが、西山牧場は、オーナーブリーダーの育成牧場ということもあって、取材に応じて頂けたのは好運であった。

　それと同様に、土日も競馬開催日と重なり、またスタッフの休日に充てられる牧場も多いので、通常は1週間のうち火曜日〜金曜日の4日間が取材に適した曜日ということになる。そこに各育成牧場のスケジュールが集中する。しかも、中旬から下旬の実質2週間の間に、大半の育成牧場の取材日程が組まれる。相当な過密日程にならざるを得なくなる。

　毎年、この時期はそんなわけでかなりきつい仕事になるが、それでも、デビュー前の2歳馬を間近でじっくり見られるのは、大変興味深い。また、育成牧場毎の馬づくりの違いなども感じられて、とても勉強になる。




「立ち写真を撮っていると、走るか走らないかがおおよそ分かるのではないか？」と言われることがある。「何十年も見続けているのだから、結構高い確率で出世しそうな馬を判別できているのではないか？」などとも言われる。

　しかし、結論から言えば、「そんなことは分かりません」と答えるしかない。そもそも、日々、実馬に騎乗して調教している人でさえ、分からない(らしい)のだ。

　育成牧場のスタッフたちは「大きな欠点があれば、これは出世するのは無理だろうということくらいは分かります。また、血統背景や走法、体型などから、芝適性かダートもこなせるかどうか、というのもおおよそ判別できます。でも、実際には、走らせてみないと本当に分からないんですよね」と吐露する人が多い。

　そうだろうと思う。デビュー前から当該馬が将来的にどこまで出世できそうなのかを予言することなど、不可能なのだ。ただ、どの馬かは分からないが、数多くの2歳馬の中には、確実に先々走ってくる逸材が混じっている、ということ。なので、できるだけ多くの2歳馬を見ておきたいという気持ちはいつもある。

　1歳馬市場でもそうだが、いち早く逸材を発掘し、密かに注目しながら追いかけ、その馬が結果的に後々期待通りに大出世を遂げてくれる、というのが理想である。多くのファンが楽しんでいるPOGの醍醐味もまたそこにあるのだろう。走る確率の高さから言えば、ノーザンファーム生産のディープインパクト産駒というのが数年前までの人気上位馬であった。しかし、絶対的な存在として君臨していたディープインパクトやキングカメハメハ産駒がいなくなり、種牡馬の勢力地図も少しずつ変化してきている。

　どこに逸材が転がっているか分からない戦国時代になってきているとも言える。