セントウルS出走予定のスマートクラージュ(c)netkeiba.com
京都競馬場大改修の影響を受けて、2020年〜2022年までの3年間は中京競馬場で開催されていたセントウルSですが、その京都競馬場も無事に改修を終え、今年は4年ぶりに阪神競馬場の芝1200mで開催されることになりました。
阪神競馬場でのセントウルSと言うと、2008年カノヤザクラ(1着→1着)や2009年1着アルティマトゥーレ(3着→1着)、2013年ハクサンムーン(1着→1着)、それに加えて2016年ネロ(2着→2着)、2017年ラインミーティア(1着→2着)など、新潟芝1000mのアイビスSDからの連勝又は連続好走馬が多いことで有名なレースでもあります。
しかし今年のアイビスSD出走馬は、5着レジェーロと6着ジャングロの2頭のみ。連勝を期待できるような馬の出走はありません。よって このデータは今年は封印……と、ここで思考を停止してしまっても良いものでしょうか。
たとえばアイビスSDからの連続好走が"夏の好調を維持して"のみならず、"短距離志向の馬に有利なレースだから"と考えた場合、どうでしょう。そこで調べてみたのが、セントウルS出走馬の距離短縮別成績です。
■セントウルS、距離短縮時の連対率別成績
連対率50%以上 95戦【12- 7- 8-68】勝率13% 単勝回収158%
連対率49%以下 94戦【 1- 4- 5-84】勝率 1% 単勝回収 2%
合計 189戦【13-11-13-68】勝率 7% 単勝回収 80%
※現条件施行になった2007年以降。阪神開催のみ。
※JRA成績のみの集計で、外国馬は除く。
驚くべきことに、距離短縮時の連対率が50%を切っていたセントウルS勝ち馬は過去13年で2016年のビッグアーサー1頭しか存在しませんでした。距離が前走より1mでも短くなった場合に強さを見せているかどうか、ここがセントウルSを予想する上での重要なポイントになってくるのかも知れません。
今年のセントウルS出走予定で、距離短縮時の連対率が50%を超えている馬はスマートクラージュ(3戦3連対で100%)、ピクシーナイト(1戦1連対で100%)、ジャングロ(3戦2連対で67%)、エイシンスポッター(2戦1連対で50%)の4頭だけ。残る12頭はすべて連対率49%以下のグループに分類されることになります。
ただし、ビッグシーザーとドルチェモアの2頭は"距離短縮レース"への出走経験自体がありません。これは現在の条件施行になった2007年以降のセントウルSでは初めてのケースであり、この両頭に関しては一考の余地が残るところでしょう。
闇雲にデータだけを見るのではなく、まずは仮説を立て、そこから裏付けとしてのデータ・リサーチ。ウマい馬券では、ここから更に踏み込んでセントウルSを解析していきます。印の列挙ではなく『着眼点の提案』と『面倒な集計の代行』を職責と掲げる、岡村信将の最終結論に ぜひご注目ください。
■プロフィール
岡村信将(おかむらのぶゆき)
山口県出身、フリーランス競馬ライター。関東サンケイスポーツに1997年から週末予想を連載中。自身も1994年以降ほぼすべての重賞予想をネット上に掲載している。1995年、サンデーサイレンス産駒の活躍を受け、スローペースからの瞬発力という概念を提唱。そこからラップタイムの解析を開始し、『ラップギア』と『瞬発指数』を構築し、発表。2008年、単行本『タイム理論の新革命・ラップギア』の発刊に至る。能力と適性の数値化、できるだけ分かりやすい形での表現を現在も模索している。
1995年以降、ラップタイムの増減に着目。1998年、それを基準とした指数を作成し(瞬発指数)、さらにラップタイムから適性を判断(ラップギア)、過去概念を一蹴する形式の競馬理論に発展した。『ラップギア』は全体時計を一切無視し、誰にも注目されなかった上がり3ハロンの“ラップの増減”のみに注目。▼7や△2などの簡単な記号を用い、すべての馬とコースを「瞬発型」「平坦型」「消耗型」の3タイプに分類することから始まる。瞬発型のコースでは瞬発型の馬が有利であり、平坦型のコースでは平坦型に有利な流れとなりやすい。シンプルかつ有用な馬券術である。