▲神戸新聞杯のメリオーレムについて友道康夫調教師にインタビュー(c)netkeiba
これまで7戦すべてで3着以内と、堅実な走りを見せるメリオーレム。最後の一冠・菊花賞を目指して神戸新聞杯に出走します。
友道康夫厩舎としては、かつて手掛けたGI馬・シュヴァルグランの初年度産駒でもありますが、深堀りしてみると「お父さんと全然違って…」という点が多々。加えて、菊花賞に出走できそうな賞金を持ちながら、あえて前哨戦を使うのには、この馬特有の理由があるのだとか。神戸新聞杯、そして菊花賞に向けて、友道調教師に伺いました。
(取材・構成:大恵陽子)
厩舎では珍しい小倉デビューは誤算続き!?
──メリオーレムはデビュー前から期待が高い馬だったそうですね。
友道 シュヴァルグランの初仔だったので厩舎としても楽しみにしていましたし、初めて見たのが1歳の時だったんですけど、その時からしっかりした体をしていました。体幹がしっかりしていそうで、性格もどっしりしている雰囲気の馬でしたね。
──父シュヴァルグランは5歳でジャパンCを制覇。ハーツクライ産駒ということもあってか、年齢を重ねるごとに強くなっていった印象だったので、メリオーレムのその姿は意外でした。
友道 シュヴァルグランは最初の頃はまだ子供っぽかったですからね。メリオーレムはお父さんとは全然違って、体つきも似ていないです。だから、牧場の人は「たぶん距離はもたないかもしれません」と話していました。
▲長きにわたって活躍した父シュヴァルグラン(撮影:下野雄規)
──父は3000mの阪神大賞典を勝ち、天皇賞(春)でも2着だったけれども、ですか。
友道 調教がすごく動いていたので、そういうのもあって牧場の人は距離についてそう感じていたのかもしれないです。
──短距離馬は調教から速い時計をバンバン出す印象で、メリオーレムもデビュー前の追い切りからしまい11秒2を出していましたね。
友道 そう、時計も出ていたんですよ。対照的にシュヴァルグランは調教では全然走らなかったから、やっぱりそこも違いますよね。ただ、調教の感じからメリオーレムも距離はもちそうな感じがしましたし、シュヴァルグランの仔なので対応してほしいな、と思って、長めの距離のレースを使っていきました。
──デビュー戦は昨夏の小倉芝2000m。友道厩舎が小倉で2歳新馬戦を使ったのはここ3年でわずか6回のように、珍しいですね。
友道 本当は新潟でデビューさせる予定だったんです。でも、競馬場で使う馬房が回ってこなくて。それで、小倉に行きました。
──競馬場の馬房が確保できていないと出馬投票ができないですけど、馬房数は限られていますからね。元々のプランでは広いコースでのびのびと走らせる予定だったんですね。
友道 調教でも結構動いていたので、小倉でも勝てるかなと思いましたけど、小回りで後手を踏む競馬になってしまいました。結局、3戦目で初勝利を挙げたんですけど、最後のツメが甘くてスッと勝ち上がれなかったところはシュヴァルグランに似ているな、と思います。
「お父さんのように長距離のレースで活躍してほしい」
──初勝利後は連勝でエリカ賞を勝ち、その後はすみれS3着、プリンシパルS2着。シュヴァルグランの仔でクラシックに繋がるレースを勝ちたかった思いも強かったのでは?
友道 勝ちたかったけども、お父さんは3歳春の若駒Sを右肩跛行で出走取消しました。春は間に合わなかったから、それを思えばメリオーレムは春もきちんとレースに使えて、お父さんよりは順調にいけたのかなとも思います。
▲23年12月阪神競馬場で行われたエリカ賞を勝利(撮影:山中博喜)
──その後は7月に古馬混合の2勝クラスを勝ちました。レース後コメントによると、内にモタれる面があるとか?
友道 すみれSでも内にモタれて最後は追いづらかったようです。
──だからでしょうか。ジョッキーの起用を見ていると、しっかり追える騎手を中心に采配されているのかな、と。
友道 調教は時計も出て動くけど、ズブいところもあるしモタれ癖もあるので、しっかり追ってくれるジョッキーの方がいいかなと思っています。レースになると前向きさがないのとヨレる面もあるので、3戦目からはチークピーシズも着用しています。
──この後ですが、神戸新聞杯の後は最後の一冠・菊花賞でしょうか?
友道 距離は長い方がいいので、神戸新聞杯の2200mより菊花賞の3000mの方がチャンスがあるのかな、と思っています。でも、チークピーシズを着けているように、いきなりぶっつけで走るようなタイプじゃないので、菊花賞前に1回どこかで使った方がいいかな、ということで神戸新聞杯を選びました。例年だと賞金的にはたぶん菊花賞に出られると思うんですけど、そういう理由からです。
──最後に意気込みを聞かせてください。
友道 シュヴァルグランは夏の札幌で2着に敗れて、菊花賞は諦めて自己条件の500万下(現1勝クラス)から一歩ずつ上がるように3連勝でオープン入りしました。それを考えると、お父さんより堅実に走ってくれていますし、こないだ記者から「4着以下がない」と聞いて、改めてすごい馬だなと感じました。お父さんはここから長く走ってくれたので、メリオーレムも神戸新聞杯や菊花賞はもちろん、来年以降も長距離のレースで活躍できればいいなと思っています。
(文中敬称略)