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【ハイセイコー物語】中央初戦/第11話

  • 2025年12月16日(火) 12時00分
■前回まで
新冠の武田牧場で生まれたハイセイコーは、3歳時に大井で6戦6勝、それもすべて圧勝という驚異的な成績をおさめた。4歳になった1973年、ホースマンクラブにトレードされ、中央の鈴木勝太郎厩舎に移籍した。(馬齢は旧馬齢)

 ハイセイコーは大井にいたときから注目を浴び、多くのマスコミ関係者がその一挙手一投足を見逃さぬよう集まっていた──東京競馬場に厩舎を構える鈴木勝太郎の長男で、調教助手の鈴木康弘はそう聞いていた。ゆえに、ある程度覚悟はしていたのだが、予想を遥かに上回るマスコミ関係者の数に驚いていた。

「康弘、わかっただろう、ハイセイコーというのはこういう馬なんだ」

 父の勝太郎が切り出し、つづけた。

「これからもっと人気が出る。だが、我々がああだこうだ言っても、ファンには伝わらない」

「じゃあ、どうすればいいんですか」

「ルールを決めて、ハイセイコーのいろいろなことをできるだけメディアに知らせてやれ。やり方はお前に任せる。新聞や雑誌、テレビなどに出ることで、この馬の本当の姿が伝わるようにするんだ」

 勝太郎は厳格なことで知られており、普段からマスコミを寄せつけなかった。その父にこう言わしめる特別なものを、ハイセイコーは持っていたのだ。

 康弘は、集まったマスコミ関係者の前でこう言った。

「ハイセイコーのことはすべて僕がお伝えします。ただ、

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作家。1964年札幌生まれ。「Number」「優駿」「うまレター」ほかに寄稿。著書に『消えた天才騎手 最年少ダービージョッキー・前田長吉の奇跡』(2011年度JRA賞馬事文化賞受賞作)など。netkeiba初出の小説『絆〜走れ奇跡の子馬〜』が2017年にドラマ化された。最新刊は競馬ミステリー『ブリーダーズ・ロマン』。「優駿」に実録小説「一代の女傑 日本初の女性オーナーブリーダー・沖崎エイ物語」を連載中。

関連サイト:島田明宏Web事務所

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