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「机上からファンに幸せを届ける異色の幸せ配達人」<第27回>妹尾和也

  • 2018年11月26日(月) 18時00分
妹尾和也

一般の競馬記者とは異なり、現場取材ではなく情報ベースで予想を組み立てるという妹尾さん。



普段、関係者と密に接する競馬記者だから馬券が上手いのは当然、と思っているファンは少なくない。しかし、なかには現場取材ではなく、デスクに寄せられる記者からの情報をベースに活躍する記者もいる。妹尾和也―――。専門紙『デイリー馬三郎』の紙面を作る“編集”という立場ながら好配当を連発し、その卓越した予想センスは、関係者からも一目置かれるほどだ。異才にして鬼才の記者・妹尾和也の素顔に迫った。(取材・文=藤村和彦)

謙虚な姿勢の裏に隠された馬券師としての原点



 物腰が柔らかい。ギラギラとした、獲物を狙うような態度とは正反対である。穏やかな妹尾氏のいったいどこに、強烈な馬券師の正体が潜んでいるのか―――。まずは、競馬との出会いについて尋ねてみた。

「世代的に、ゲームや漫画で競馬を知る機会に恵まれていまして。そこから興味が深まっていきました。本腰を入れて注目するようになったのは、中学3年生の頃ですね。競馬新聞やスポーツ新聞を開いて、予想しながらテレビ中継を観るようになりました。最初にのめり込んだ馬はダンスインザダークです。ラジオたんぱ杯3歳S(現ホープフルS)あたりから応援し始めて、クラシックもずっと追いかけていました。皐月賞は回避して、ダービーでは抜け出したあとに差されて2着で。3冠最後の菊花賞は4角で視線から消えて驚きましたが、一気に差し切りましたからね。直後に引退したこともあり思い出深い馬です」

 大学卒業後は、馬サブローの編集部員となった。社内で紙面づくりに励む。現場への憧れは抱かないのだろうか。

「タイプ的には、内勤のほうが向いているように思います。ここ数年は、水曜の追い切り日だけ栗東トレセンで仕事をするようになりました。調教班として時計を取っていますが、一人前にはほど遠いレベルですし、専門の皆さんの技術は職人芸としか言いようがないですね。レース開催日に馬を目の当たりされている、目の肥えた方々が自社でも他社でもたくさんいらっしゃいます。僕は競馬場での勤務もしていません。トラックマンと呼ばれると、後ろめたいというのが本音です」

妹尾和也

妹尾さんが編集で携わったという紙面。できるだけ情報が多く、わかりやすい紙面を心がけているのが一目で見て取れる。



予想スタンスの基本は一変する余地の大きさ



 中学時代の原点に沿って、予想哲学を構築しながら質を高めてきたのだろう。現場と距離がある内勤者だからこそ、自身の色を鮮烈に出せているのに違いない。核心を突こう。予想のスタンスについて、だ。

「各馬の強さの比較を基本に考えられている方々は多いと思います。僕もそれはベースとしてあります。そのうえで、どれぐらいその馬に変わる余地が存在するのかというところへ重点を置いて向き合っています。調教や展開、芝からダートへ転じるといったさまざまな要素がそれぞれの馬にあって一戦一戦で違いますよね。例えば2歳戦では新馬戦と2戦目でガラッと変わってくる馬がいます。条件が異なることで最も変わってくるのはどの馬なのか。そういったブレ幅が大きいケースが多いレースほど得意だと自分では思っています。隠れている部分を探り当てていくのが好きなので、馬券的な妙味を含めても下級条件ほどそういった対象になりやすいですね。毎週、全レースの印を打っています。3場開催であれば36レースで、基本的にすべてのレースの馬券を買っています。毎年、周りが呆れるほど、相当つぎ込んでいますね(笑)」

―――えっ…。回収できていなければ、絶対に成立しない話ではないか。

「ええ、100%弱ぐらいですね。全レースの予想を見て参考にしてくださっている方もいらっしゃると考えると、自分が買わないわけにはいきません。毎レース、馬券を買うことで学べることも多いと思うんですよ。本命馬により注目するので、位置取りとペースを照らし合わせてレースの全体像を認識しやすくなります。結果が出なければ、その馬が前走で一緒に走った馬に対する評価も下げるべきなのかと考えますし、次の予想に向けての判断材料が増えていきますから。馬券は勝てるのにこしたことはありません。同時に、大きく負けるのをできるだけ減らすのが重要だと思いますね」
 
 購入金額と回収率を聞けば、破天荒な馬券師として名を馳せる所以がわかる。だが、予想に臨む姿勢や取り組み方は完全なる理論派だ。これ、逆に迫力がある。そんな妹尾氏は、恐るべき幸せ配達人の顔も持つ。

「2009年のエリザベス女王杯、11番人気のクィーンスプマンテと12番人気のテイエムプリキュアの行った行ったで決まったレースがありました。馬サブローの1面で馬券プレゼントを担当していまして。3連単とワイドを合わせて、おひとりの方に的中馬券を送らせていただきました。156万円を超えていましたね」

妹尾和也

前に行った2頭で決まった2009年のエリザベス女王杯。この156万馬券を読者に届けられたことが、これまでの記者人生でうれしいことだったそうだ。



 3着に1番人気のブエナビスタが入りながら、3連単の払い戻し金はじつに154万5760円である。目立つ場面で大仕事なんて格好いい。

「本命はクィーンスプマンテでした。ブエナビスタが追い込み馬なので、ほかの有力馬も動けないだろうと考えて。展開を踏まえれば、やはり前に行くテイエムプリキュアも怖いですからね。その日は内勤で、機械系統のトラブルがあって業者さんに直していただいている最中でした。レースもチラチラとしか観れなかったのですが、“あっ、残るわ”と(笑)。馬券プレゼントもそうですが、自分の予想を参考にしてちょっとでも懐が温かくなっていただければ有難いですね。それが一番です」

鬼才・妹尾が語るチャンピオンズCの見立てとは?



 今週のメインはチャンピオンズCである。妹尾氏はどのような捉え方をされているのか。

「JBCクラシックの1〜3着馬がいてルヴァンスレーヴとゴールドドリームが加わりますからね。上位勢は強力です。ただ、そのなかでしっかりと順位付けをして絞った予想で挑めば馬券的にも楽しめると思います。具体的な買い目は、週末までお待ちください(笑)。将来的に楽しみな馬ですか? 同じダート路線でいうと、オープンに上がったばかりのインティに注目しています。来年、どこまで伸びていってくれるのか、注目しています」

 お酒が大好きだという。オンとオフの切り替えも巧いのだろう。只者ではない馬券師だ。妹尾氏の予想を、ぜひ参考にしていただきたい。

合田直弘

普段、水曜以外は表に出ることはなく、社内で主に紙面構成などを行っているという。



妹尾和也は『ウマい馬券』でチャンピオンズCの予想を公開中!
  • ウマい馬券

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