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判断ミスか、必然か──川田将雅が語る『詰まる』のメカニズム【In the brain】

  • 2022年09月16日(金) 18時01分
“VOICE”

▲川田騎手が語る進路取りの考え方(撮影:福井麻衣子)


最大で18頭で行われる日本の競馬、その中で限られた進路を確保するために、馬上では常に騎手同士の駆け引きが行われているというのは多くの騎手が述べていることです。その為進路を確保できず詰まってしまうこともしばしば。

しかし、そんな進路取りこそがジョッキーにとって大事な能力だと川田騎手は語ります。常に状況が変わっていくレースの中でジョッキーは何を判断して進路を選択しているのでしょうか、川田騎手が選ぶ「勝てる可能性が残されたその1割」の進路とは…。

(取材・構成=不破由妃子)

そもそも全馬が真っ直ぐ走れば後ろは“詰まる”


 直線で行き場がなく、結果、脚を余して負けてしまう──競馬ではめずらしくないシーンです。その馬の馬券を買っていたファンのみなさんは、「下手に乗った!」となりますよね。その気持ちはよくわかります。 ただ、「詰まった」=「すべて下手に乗った」という考えは、僕にはまったくありません。なぜなら、詰まるということは、自分の前にいる馬たちが真っ直ぐに走った結果、スペースが生まれなかったということですから。

 たとえば、車で2車線の道路を走っていたとして、自分の目の前を2台が併走していれば、その目の前の車を追い抜くことはできませんよね。その後、2車線が3車線になっても、隣に車がいれば3車線目に移動することはできない。競馬もそれと一緒なんです。

 レース後、「詰まってしまい、すみません」「スペースがなく、すみません」などと謝る日本人ジョッキーのコメントをよく目にします。しかし、海外のジョッキーが詰まったとき、どういう表現をするかというと、「今日は彼の日ではなかったね。アンラッキーだった」となるのです。

 日本人ジョッキーは、とにかくまず謝らないといけない。いっぽう外国人ジョッキーにしてみれば、詰まったのは運がなかった、流れがよくなかったという不可抗力の産物なので、謝る理由がない。文化の違いであり、詰まることも競馬だということを認識してもらえているかどうか。その違いがよく表れていると思います。

“VOICE”

▲「詰まること」に対して日本と海外で文化の違いがよく表れている(撮影:福井麻衣子)


 レースにおいて、JRAが定めた細かいルールがありますが、簡単にひとつ説明すると、日本の競馬では

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1985年10月15日、佐賀県生まれ。曾祖父、祖父、父、伯父が調教師という競馬一家。2004年にデビュー。同期は藤岡佑介、津村明秀、吉田隼人ら。2008年にキャプテントゥーレで皐月賞を勝利し、GI及びクラシック競走初制覇を飾る。2016年にマカヒキで日本ダービーを勝利し、ダービージョッキーとなると共に史上8人目のクラシック競走完全制覇を達成。

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