若駒S(23日、中京芝2000メートル)といえば、記者より少し上の世代の方は
トウカイテイオー、記者と同世代なら
モノポライザーって声もあろうが、圧倒的多くの競馬ファンは
ディープインパクトの名を真っ先に挙げることだろう。ん?真ん中の馬だけGIを勝ってない?いやいや、
若駒Sを見終えた直後は「間違いなくクラシックの本命馬が登場した」と思ったものですけどね(当時の“橋口一派”だけの感覚かもしれませんが…)。
まあ、なんだかんだで記憶に残るレースの多いオープン特別なのだが、2005年
ディープインパクトが別格中の別格と感じるパフォーマンスだったのは確かだろう。しかしながら、この日の記者は同時期に開催されていた小倉競馬に出張中。その検量室で「こんな馬に乗ってみてえ〜」と歓声を上げていた
中舘英二現調教師のお姿は拝見していたのだが、当の
ディープインパクトは映像越しだった。もちろん、その衝撃は映像でも十二分に感じられたとはいえ、実際に自分の目で見たレースのほうが記憶に残っている。これも現実だ。
小倉に行っていた数年を除けば、そのほとんどをライブ観戦してきた
若駒Sの
ベストパフォーマーを挙げるなら、記者は16年の
マカヒキを指名したい。デビュー戦は
M.デムーロ騎手が直前の調教に失敗(?)した影響で太め残りでの出走。結果的には快勝したものの、そんな状況から冬場に3か月のレース間隔を取れば、
若駒Sもまた太め残り必至の状況。「角居厩舎の隠し玉」
ドラゴンカップの単勝で勝負できるなとニヤニヤしていた記憶がよみがえるのだが…。
パドックに登場した
マカヒキはまさかの究極の仕上がり。4角ではほぼ同じ位置にいた
ドラゴンカップを一瞬にして置き去りにしてしまった走りは、上がり32秒6という強烈な数字とともに、鮮烈に記憶に刻み込まれた(ちなみに
ドラゴンカップはブービーの7着でした)。
「パドックでの姿を見て“やべえ、仕上がり過ぎちゃった”と(苦笑)。
若駒Sは
ドラゴンカップの近くを歩いていたんですけど、あの馬を引っ張っていた高田さんから“バキバキに仕上がってるじゃん!”と言われたのを覚えてますよ。いや、あのときの
マカヒキは本当にとんでもなかったな」(大江助手)
デビュー2戦目の馬とは思えない、究極の馬体のつくり――。未視聴の方は当時の映像をぜひ見てもらいたい。
昔の話に行数を使い過ぎた。今年の話もしないと…。
若駒S(23日=中京芝2000メートル)に
アドマイヤザーゲを出走させる友道厩舎。前走の
ホープフルSでは10着に沈んでしまったが、あの敗戦で評価を下げる必要はないと思っている。
「外から出して行ったことで少し力んでましたよね。勝負に行ってのものなので仕方がないことなんですが、あの形の競馬は合わないと再確認しました。自分のリズムで運ぶことができれば、また違うと思いますよ。少頭数だったとはいえ、2戦目の
黄菊賞の勝ち方はなかなかできるものじゃないですから」
大江助手はこう
ジャッジした後で「前走を見ると
皐月賞よりダービーのほうが条件が合いそう」とも付け加えていた。
若駒Sで賞金を加算できれば、ダービー前にひと叩きの戦略でもOK。もちろん、自身に合うレースを選んで走りながら、力をつけていくパターンもありだろう。いずれにせよ、ダービーまでの道筋をつけておきたい
アドマイヤザーゲにとっては大切な一戦だ。
(松浪大樹)
東京スポーツ