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フィエールマンの全妹エクランドールに託された“伝説のセカンドシーズン”/トレセン発秘話

東京スポーツ
  • 2021年01月28日(木) 20時37分
「同期のアーモンドアイとは比べ物にならないかもしれない。ただ、決して強くない体質にあってGIを3つも勝ってくれたし、僕をフランス(凱旋門賞)にまで連れていってくれた。生まれて初めて肌で名馬を感じられた3年間は振り返れば本当に素晴らしく、もう感謝しかないですね」

 これは昨年末にフィエールマンの引退が決まった際、手塚貴久調教師の口からこぼれた言葉だ。史上最少キャリアで菊花賞天皇賞・春を制覇。天才肌のすごみとモロさが12戦のキャリアに凝縮されている。ノーザンファーム天栄から美浦に戻るたび、スレた当方さえワクワクした気分にさせる存在だったゆえ、しばし感傷に浸るのも悪くないと思ったが…。

 年明け間もなく手塚厩舎を訪れると、馬房に一頭のニューフェースを発見した。あどけなさの残る無垢な顔を見れば、ひと目で新馬と判別はつく。傍らに立つ担当の田中良太助手に「めんこい子だねぇ。まだ走らせるのがかわいそうなくらい」と声をかけると、思わぬ言葉が即座に返ってきた。

「何を言っているんですか(笑)。よく見てください。これが“噂の妹”ですから」

 そう、まさに引退した兄と入れ替わるように入厩してきたのが、フィエールマンの全妹エクランドールだった。無論、サラブレッドも人間同様、天才アスリートのきょうだいすべてが天才とは限らない。84年のグレード制導入以降、両親とも同じくする全きょうだいのGI制覇はわずか7例。最高峰はサンデーサイレンス×ダンシングキイの3きょうだい(ダンスパートナーダンスインザダークダンスインザムード)で、17年のサトノアラジン(姉ラキシス)以降、全きょうだいのGI制覇は途切れているが…。

「少しおなかが巻き上がって細身のシルエットフィエールマンそっくり。カイ食いもそこまで良くない。まあ、これも兄譲りと言うのかな(笑)。ただ、やや首の高い走法でも持っているものは良さげ。走るよコレは」

 管理する手塚調教師も当然ながらイメージを重ねるのはGI・3勝馬の全兄。フィエールマンと全く同じ1回東京第1週の芝千八(鞍上ルメール)でデビューが決まったのも、単なる偶然ではないだろう。

「除外確率が高そうなら土曜の未勝利(芝千八)も考えている。“ドンとこい”とまでは言えないが、既走馬相手でも勝ち負けするレベルにはあると思うからね」(同師)

 競馬は血のドラマ。感傷に浸る間もなく全妹に託された伝説の“セカンドシーズン”を、しばし楽しんでみようか。

(美浦の愚兄野郎・山村隆司)

東京スポーツ

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