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エプソムC

  • 2011年06月13日(月) 18時00分
 シーズン末らしい勝ち馬が誕生することもあるが、このあとひと息入れ、秋のビッグレースでも期待できる新星が勝ってくれると最高。そういう意味で、実に楽しみな4歳ダークシャドウの完勝だった。2月に1000万特別を勝ったばかりで強気に挑戦したのがGII「大阪杯2000m」。そこでヒルノダム―ル、エイシンフラッシュなどと接戦。別定57kgなのにあわや、どころかあと一歩で勝ったにも等しい内容の1分57秒8。輸送で急に「16kg」も体が減った中での快走だった。

 さすがに激走が応えたか、そのあと反動が出るなどして都大路Sを回避。立て直したここは調整に終始して2カ月ぶり。必ずしも非の打ちどころなしというほど素晴らしいデキではないと思えたが、結果は、改めてスケールの差を感じさせる圧勝だった。「安田記念」でワンツーを決めるなど素晴らしい勢いに乗る堀厩舎、見事な仕上げ手腕である。

 父ダンスインザダーク(18歳)は、ダークシャドウが勝った時点で本年の総合種牡馬成績ようやく「20位」に浮上。あまりにサンデーサイレンスの後継種牡馬があふれているため、擁する本元の社台グループでも交配数がどんどん減っていたが、久しぶりに逆襲の逸材登場。種牡馬ダンスインザダークの、交配数減に抗する反撃でもあった。

 ダークシャドウのファミリーは、祖母ユーゼフィア(父ダンチヒ)が名種牡馬グリーンデザートの全妹。グリーンデザートは最初、短距離タイプのスピード系の評価だったが、ケタ違いに幅広く枝を伸ばすダンチヒ系とあって、産駒のケイプクロスを通じシーザスターズ(英ダービーなど)を送り評価を大きく変化させた。シーザスターズはウオッカの交配相手である。ダークシャドウの兄弟は、母の父にプライヴェイトアカウント(父ダマスカス)をもつためか、ユノナゲット、ダノンブライアンなどダートの短距離型が多かったが、代を経たグリーンデザートの一族に、ダンスインザダークの血がうまくマッチしたのだろう。春後半の急上昇の成績だけでなく、いまから秋のビッグレースが楽しみである。

 良馬場発表に回復したとはいえ、前半「47秒6−59秒6…」の流れで、レース全体の上がりも「47秒7−35秒3」止まり。圧勝したダークシャドウだけが1分47秒3で、以下が離れたことを考えると実質は「やや重」に相当するくらい少しタフな芝だった。ダークシャドウはこの日、馬場の内を衝いた馬ばかりが伸びる芝コンディションを福永騎手はたちまち察知。まして3番枠だから、コース取りに迷う必要なし。空いた内から一気に抜けて坂上で勝負を決めてしまった。

 外を回った馬があまり台頭できなかった芝を考えると、2着したエーブチェアマン(父キングカメハメハ)の中身も十分評価に値する。2連勝の内容は軽快な切れが生きた印象もあり、格上がりのオープンではどうかと思われたが、後方から大外に回っても速い脚が長続きした。先行馬つぶれの流れではない。こちらも4歳の上がり馬で、春先は1000万下でも伏兵評価だった馬。ここまで17戦【4−3−1−9】。下級条件時から1度も1番人気になったことがない不思議な記録を持っている。4歳馬なのでぴったり賞金は「1600万」条件からの再出発。さすがに人気にならざるをえないが、祖母は重賞3勝のサマニベッピン。母父サンデーサイレンス。たちまちオープン戻ってくるだろう。

 3着セイクリッドバレー(父タニノギムレット)は、肝心なときになぜかあと一歩が足りない成績を残してきたが、またまた今回も同様。3コーナー手前であまり大きな不利とは見えなかったが、自身が顔をそむけブレーキを踏むロスがあった。最後方から直線に向いたが、運の悪いことに内外に広がった馬群のどこにも空いたスペースなし。仕方なく最後は外に回って2着馬とは小差の3着だった。若い丸山騎手がミスをしたわけではない。もともとそういうタイプだった。コンビで1着、3着。他の騎手よりずっと手は合っている。ぜひ、次に巻き返したい。もともと平坦歓迎血筋でもある。

 キャラクターの特徴が出てしまった、というより見事に発揮して見せたのはキャプテンベガだった。3年前が3着(横山典)、昨年が3着(後藤)。今年が惜しい4着(吉田豊)。だれが乗っても、どういうレースを展開させても、もう3年間もオープンに出世して以降【0−5−4−5−3−13】。ずっと同じような成績だから、これはもう納得してあきらめるしかない。

 アニメイトバイオ(父ゼンノロブロイ)は、外枠を引いて、事実上の背負い頭に相当する56kg。なんとか内に潜り込みたかったが、セイクリッドバレーと同様、そういうスキが生まれなかった。正攻法の差しで最後は力負けになったが、速い脚が長続きするタイプではないから仕方がない。良馬場向きのダンツホウテイは、実質「渋馬場」の芝状態が苦しかったか。スズジュピターは、こういう息の入れにくい流れだと東京の1800mは1ハロン長いのだろう。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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