5月8日(火)にJRA宮崎育成牧場にて、九州トレーニングセールが行われた。上場されたのは22頭で、そのうち九州産馬が13頭。残る9頭は九州以外で産まれて、九州で育成された馬たちである。
最近は九州の育成場に注目する調教師も増えているようで、たとえば鹿児島県鹿屋市にある「鹿屋共同育成センター」は、メイショウサムソンを育てたことで有名になった。また志布志湾沿いにある山下牧場などでは、脚元に不安を発症した馬に海を歩かせて治療する「潮漬け療法」を実施。同様のことをしている宮崎軽種馬共同育成保養センター(宮崎市中心部から数キロ)には、JRAの在籍馬はもとより南関東からも休養馬が来場している。
サラブレッドは寒帯動物であるとはいっても、やはり一年中あたたかい南のほうが成長も新陳代謝もよくなるのかも。そのアドバンテージで活躍馬が続出することを期待したいものである。
しかし昨年末に荒尾競馬が廃止されたことで、九州の競馬業界は沈滞ムード。「たんぽぽ賞」「霧島賞」という九州産馬限定レースも荒尾とともに廃止されてしまうのではシャレにならん……。
ということで、馬産地のみなさんは、関係各所への陳情に駆け回ったらしい。その甲斐あって、今年は佐賀競馬場で「霧島賞」が実施されることに。トライアル戦も2つ行われる予定だそうで、これまで以上に「馬産地・九州」が盛り上がってくれることを期待したい。
ちなみに現2歳の九州産馬はおよそ80頭。最初の目標は小倉競馬場で行われる「ひまわり賞」だから、多くの馬はJRAに入厩することになる。
その次の目標となるのが「たんぽぽ賞」。昨年は12月に2歳戦として荒尾競馬場で行われたが、本来は3歳春に行われる「九州産馬のダービー」。そこに出走する馬を確保するという意味も含め、九州軽種馬協会では、この市場で取引された九州産馬に対して補助金を支給することになった。
騎乗供覧に騎手が騎乗
それに呼応して、佐賀県馬主会が初の団体購買を実施。さらに騎乗供覧には、佐賀所属の真島正徳、倉富隆一郎、石川慎将、川島拓の各騎手、そして名古屋から丸野勝虎騎手が参加して、気合の入った走りを披露してくれた。
そのおかげもあって、各馬とも上々のタイムを計時。昨年はメモリアルイヤー(鹿児島県出身)を筆頭に、九州産限定戦以外のJRAのレースで勝利した馬も多く、九州の馬と育成のレベルは徐々に上がっているという印象がある。騎乗供覧後の展示も盛況で、競りへの期待感は高まっていった。
そしてその結果は、22頭のうち14頭が落札。九州産馬は13頭のうち11頭が購買され、そのうち9頭は佐賀県馬主会が落札者だった。これは「佐賀県馬主会名義で落札して、佐賀に入厩させれば補助金が出る」という制度によるところが大きいだろう。ともかく売却率は60%を超えた。あとはこのなかから活躍馬が出ることを祈るのみだ。
活躍馬が出ることを祈るのみ
ちなみに時節柄、POGで注目できそうな馬……となると、母ベルガモットシール(牡・父ロドリゴデトリアーノ)がJRAに入りそう。おそらく「ひまわり賞」を狙ってくることだろう。
昨年12月に小倉競馬で勝利したヤングエイトの全妹(父マルカダイシス・母リャマーダ)は、佐賀県馬主会が落札。地方競馬もOKのルールならとは思うが、POGという観点では微妙かも。来春実施予定の「たんぽぽ賞」にエントリーしてくれることを期待したい。
九州の馬産地の厳しさは年々増しているとは思うが、それに負けない力を発揮する可能性は十分ある。佐賀、そしてJRAでデビューを目指す九州産馬に、ぜひたくさんの注目を!