最大の注目は、すでに4冠を制し、態勢がととのえば秋には凱旋門賞挑戦を展望する4歳オルフェーヴル(父ステイゴールド)が、いったいどんなレース内容を見せてくれるのか。立ち直ってくれるかである。だれだって、いい時のオルフェーヴルに戻り、立ち直って欲しいと考えている。3冠を勝ち有馬記念まで制したオルフェーヴルは、ときに鞍上の池添騎手を振り落としたりするから、非常に難しい内面をもつ馬として知られるが、クラシック3冠を勝ち切ってみせたのだから、あの時点で日本のサラブレッドの世界に誕生した天才ホースの1頭である。
激しい気質を秘めている。一筋縄ではいかない。ふつうのおとなしい馬とは違う。阪神大賞典で日本のエースとは信じがたいおそまつなレースを展開させてしまったから、そうやって難しい一面ばかりが取り上げられるが、どだい3冠を制した天才が、周囲の凡才の才覚やこころの範疇にとどまるわけがない。野獣のごとき内面があって不自然でもない。死闘をつづけ、1番強く、競走で相手をねじ伏せ、1番速いのだから当たり前である。わたしたちが、理解しにくい馬、捕らえどころの難しい馬と考えたり、前回の天皇賞はあの事件のあとでさすがに疲れていたのではないか、などとするのはまあ仕方がないが、手がける調教師やコンビの騎手が「気難しい馬だ」などと言い出したり、言うことを聞かずにかってに逸走したのだなどと考えているようではオルフェーヴルが気の毒である。
今回、心身両面のオルフェーヴルの判断が難しいのは当たり前。しかし、オルフェーヴルの隠されたこころの中までは理解できないとしても、7〜8分の状態には戻った、とかのトーンに聞こえるコメントを発する陣営の姿勢が不思議である。4冠を制した天才ホースがおそまつなレースを2回も連続させたあとである、勝負の結果などだれもわからないから、それはそれで別のこといい。しかし、「万全と信じる状態に仕上げた」。もう人馬の意思の疎通を簡単に失うようなこともないと確信する。それくらいが、出走させる陣営のオルフェーヴルに対する敬意だろうと思うが、陣営、案外、他人事ふうである。手がける陣営といっても、厩舎にいて接する時間は少ないのが最近だから仕方がないのだろうか。手を尽くし切った仕上げなら、つかまっていれば勝てる力関係と思えるが、▲とせざるをえない。快走するなら、もちろん納得。負けても納得するしかないという意味である。
◎は、ショウナンマイティ(父マンハッタンカフェ)にしたい。馬体に緩さを感じさせ、レースが終わったころになって突っ込んでいた3歳前半とは異なり、ここ4戦連続、阪神コースで結果を残すまでに成長した。そう速い脚が長続きしない爆発力タイプで、切れるのは300mくらい。前回の鳴尾記念も、前々回の大阪杯も猛然と伸びたのは短い直線だからだった。内回りは死角ではない。ネコパンチを途中からビートブラックがかわしに出るようにスパートする。内回りだから、ルーラーシップや、昨年の勝ち馬アーネストリー以下のスパートも早いだろう。ショウナンマイティは前回の鳴尾記念ではまくるようにスパートしたが、ひと呼吸遅らせてもフルに末脚の生きる展開と考えた。種牡馬アレッジド(直父系3代前がリボー)の「4×3」。大一番向きの血が流れている。
有馬記念と同じか、それ以上の状態に仕上がったと思えるエイシンフラッシュが相手本線。こちらも皐月賞や、有馬記念の好走をみると、かえって短い直線向きだろう(日本ダービーは超スローで動いたのは坂下からだった)。以下、勝って当然の能力をもつ注目のオルフェーヴル以下、有力馬を嫌うことなく相手に選びたい。とくに妙味がありそうなのは、もともとは自在型のウインバリアシオンと、昨年の迫力はともかく、今回はデキのいいアーネストリー(前走はほとんどレースをしていない)だろう。印は回せなかったが、7歳スマイルジャックも今回はやけにデキがいい気がする。