ワールドエース、アダムスピークが屈腱炎で戦線離脱。トーセンホマレボシも屈腱炎で早々と引退が決まった。いずれも今春のクラシック戦線を盛り上げた、ディープインパクト産駒の逸材にして良血馬である。ノーザンファームの生産馬ということでも共通する。
3頭とも、ローテーションに無理があったとは思えない。現在の高速馬場には異論を唱える立場だが、かといって、それを今回の屈腱炎と結びつける根拠に乏しい。要は、ディープインパクト産駒の「強さ」の裏に、「脆さ」が潜んでいるということだろう。
ノーザンファームの飼養管理、育成施設、育成技術、仕上げて厩舎に送り出す技術のどれも、素晴らしい。それが早期デビューを可能にし、抜群の勝ち上がり率、昇級戦の好内容、さらに春のクラシック戦線における絶対的優位に結びついている。
だが、ここにきてノーザンファーム生産の有力ディープインパクト産駒が、相次いで屈腱炎でリタイヤした事実は何を物語るのか。その人工的に仕上げていく過程に、どこか無理な部分があるという人もいる。
否定はしない。しかし、ディープインパクトの現3歳はまだ2世代目である。今年の有馬記念を終えるまでは、いや、せめて現2歳の3世代目が来年の有馬記念を終えるまでは、もう少し様子を見る必要があるだろう。
毎年の新種牡馬についても同じだ。今年の新種牡馬は不作と言われている。しかし、まだ新馬戦が始まって2か月ちょっとだ。8月を終了した時点で、やれ成功だ、やれ失敗だと決めつけるほうが、どうかしている。
ディープインパクトが、素晴らしい遺伝力の持ち主であることは疑いようもない。育成者も調教師も、ワールドエースやトーセンホマレボシの失敗を教訓に、軌道修正していくことだろう。
産駒の能力が高い種牡馬ほど、この手の失敗が付きまとう。サンデーも初期の産駒は、フジキセキ以下、こうした失敗が付き物だった。それを糧に、晩年の傑作ディープインパクトが誕生したことを忘れてはならない。