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根岸S

  • 2013年01月28日(月) 18時00分
 同日に行われた「シルクロードS」芝1200mは、前半があまりハイペースにならない京都とはいえ、「前半35秒0〜後半33秒6」=1分08秒6。シルクロードSは今年で18回目を数えるが、前半3ハロン「35秒0」というのは、史上もっとも緩い流れである。結果、どの馬も楽だから「ハナ、クビ、クビ差」の大接戦になったのは当然。

 レース前から緩いペースが予測されたから、1番人気に支持されたのはなんと逃げるだろうアイラブリリ(15着)だった。結果は、実力馬がサッと好位を確保し、波乱にはならなかった。流れを推理するのは難しい。ハンデ戦になった2002年以降、58キロ以上の重いハンデを課せられた馬は[3-2-0-4]となった。

 そして、ダートの根岸Sの中身は「35.7〜(12.3)〜35.7秒」=1分23秒7。フェブラリーSを展望するこの短距離戦が、この時期の東京ダート1400mで行われたのは12回目になるが、前半3ハロン「35秒7→」は、こちらもこれまででもっとも緩いペースである。今年、こういう組み合わせのレースが多いかもしれない。

 この先行タイプ有利の流れを、4コーナーでは最後方に近い位置から、馬群を切り裂くようにただ1頭だけ上がり「34秒台」の爆発力を発揮してみせたのが、5歳メイショウマシュウ(父アドマイヤマックス)だった。少し気楽な立場で、うまくなだめて直線だけの競馬に徹したことが素晴らしい切れ味発揮につながったという見方も成立するが、それにしても鮮やかな初重賞制覇である。

 前回のギャラクシーSでは今回1番人気のガンジスに同じ56キロで0.1秒届かなかったが、今回はガンジスが55キロに対しこちらは変わらずの56キロ。それでゴール寸前きれいに差し切っている。テン乗りの藤岡佑介騎手(26)は、前回はガンジスに騎乗していたのだから、この逆転は痛快すぎる。

 メイショウマシュウ(生産は大島牧場)の3代母は、3歳時に5連勝もして当時3歳牝馬限定のエリザベス女王杯で1番人気(10着)だったオオシマスズラン(父カウアイキング)。メイショウマシュウの沖芳夫調教師が、大久保石松厩舎の調教助手時代に手がけた思い入れの強い牝馬だという。

 メイショウマシュウの母オオシマパンジー(父スキャン)は、ノーザンダンサーの「4×4」、ネイティヴダンサーの「4×6×4×6」という意図的なクロスを持ち、そのいとこには、直線1000mの日本レコードを持ち、スプリンターズを快勝したカルストンライトオの名がある。メイショウマシュウの母方に配されてきた種牡馬は、スキャン、モガミ、カウアイキング…。ダートの短距離戦で末脚を爆発させたりするのは、イメージとしても納得である。そして、おそらく大物を倒すタイプなのだろう。

 このあとはフェブラリーSに挑戦する公算大。当然、カギは距離。500万条件のダート1700m快勝以外は、すべて1400m以下。1ハロンの延長くらいなんでもないと考えたいが、1400mの根岸SからフェブラリーSに出走した馬の成績は、過去63頭(うち1頭出走取り消し)もいて[3-1-4-55]。思われるより結びつきは弱い。とくに問題なくこなせる距離としても、GIの1600mに当該距離経験なしは大きな死角かもしれない。

 1番人気のガンジス(父ネオユニヴァース)は、好スタートから一度好位に下げ、直線は内のセイクリムズンや、外のライバルを見つつ満を持してのスパート。好位抜け出しの教科書のようなレース運びで、どこにもロスはなかったと見えた。しかし、寸前、一気に差されてしまった。

「GIを勝つにはなにかが足りない。もう少しパワーアップが必要」矢作調教師も、内田博幸騎手も認めざるを得ないのがレース後の感覚だった。過去、根岸SをステップにフェブラリーSで連対したのは、ノボトゥルー、メイショウボーラー、テスタマッタ、シルクフォーチュン(今年はぶっつけの予定)の4頭。相手にもよるが、ガンジスは候補ではあっても、どうも強気にはなれない気がする。

 そのテスタマッタ(父Tapit)。フェブラリーSは、11年が川崎記念3着のあと1分35秒3で2着。昨12年が根岸S3着のあと、1分35秒4で1着。今年は根岸S6着(59キロ)。デキが上向くとかかって行きたがるような難しい馬なので、59キロの今回、テン乗りのマクドノー騎手で6着なら上々と思えるが、今年は7歳。過去、GIIIの根岸Sを4着以下に負けてフェブラリーSで好走した馬は1頭もいないのが気になる。

 2番人気のエーシンウェズン(父Trippi、その父エンドスウィープ)は、ダートの良績はすべて1400m以下。それだけにここは答えを出したかったが善戦止まりの5着。この日のダート戦は明らかに内枠不利。距離を問わず、根岸S以外のダート6競走の連対馬は「15、10、13、16、15、14、12、14、16、13、15、8番」である。明らかにインの砂が深かった。1番エーシンウェズンの不利は大きかったろう。着差は少ないだけに大きな敗因と思える。

 3番ダノンカモン(父シンボリクリスエス)も同じような理由で9着。テスタマッタと同様、根岸S凡走馬はフェブラリーSで上位に台頭したことがないというここまでのパターンに挑戦することになる。11年は、2→4着。昨12年は、5→4着だった。7歳の今年は、9着→?となる。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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