函館記念で「馬番連勝」が発売されたのは、1992年からのこと。波乱が多かったこの夏の重賞は、それから2001年までの10年間のうち、実に8回まで、馬連は「万馬券」だったという記録がある。ただ、その後は人気も大きく割れてしまうため、現在はそれほど波乱必至のハンデ重賞ではない。
それよりは、エリモハリアー(父ジェネラス。母の父ブレイヴェストローマン)が3連勝した記録が象徴するように、ヨーロッパタイプの血を持った馬が、だいたい「2分00秒台」の勝ち時計になる洋芝適正を生かして好走するところがポイント。母の父にパドスール(その父ミルリーフ)を持つクラフトマンシップ、クラフトワーク兄弟はそろって勝っている。父にデインヒルを持つエアエミネムも、昨年の勝ち馬トランスワープ(父はフェアリーキング直仔のファルブラヴ)も、欧州色が濃い勝ち馬である。
伏兵アスカクリチャン(父スターリングローズ。母の父ダイナレター)を狙いたい。
父アフリート直仔のスターリングローズは欧州系ではないが、タフな芝向きのパンチはある。02年のJBCスプリント、03年のかしわ記念などダートで13勝もしたスターリングローズは大変なダート巧者。しかし、芝がダメというわけではなく、1000万特別を勝ったのは小倉の芝1800mだった。また、全姉に当たるゴールデンジャックは、94年のオークスを2着し、その産駒には京都金杯などのサイドワインダーがいる。
母の父ダイナレター(その父ノーザンテースト)は、90年の武蔵野Sダート1600mを62キロも背負って快勝するなど、小柄でもパンチ十分。60キロ以上のダート戦を3勝もして、1989年のダートチャンピオンとなっている。でも、ダイナレターもスターリングローズと同様に芝がダメという片寄ったタイプではなく、89年の函館記念を2分01秒1で乗り切っている。勝ち馬と0秒8差だった。
父スターリングローズ、母の父ダイナレターとなると、しかし、だいぶ地味な印象を与えてしまうのに加え、アスカクリチャンの一族の代表馬には、日経賞でテンジンショウグンと組んで大穴を演出したシグナスヒーロー(父イナリワン)、旧ラジオたんぱ賞を12番人気で3着したプリンセストウジンなどが出てきてしまう。
ますます地味な一族に思えてしまうから、昨年の七夕賞を2分01秒1で勝った際は内田博幸騎手なのに、16頭立て14番人気。夏の新潟記念は前出のトランスワープが56キロで1分57秒6。函館記念につづいて連勝したが、小差1分57秒7で3着したのが57キロのアスカクリチャン。ここでも8番人気だった。
2分01秒1で七夕賞を勝ち、高速の新潟記念は1分57秒7。ともに人気薄での快走だが、これは能力がなければムリ。たまたまではない。また、函館記念を制したトランスワープと接戦に持ち込んだ力関係も強調材料になる。洋芝向きのパンチを秘めると同時に、アスカクリチャンの血統背景は、典型的な平坦血筋でもある。
相手本線は、素直に巴賞の勝ち方が良かったエアソミュール(父ジャングルポケット)。トニービン系のジャングルポケットは、自身はもちろん、産駒も洋芝は得意。
以下、ハンデが56キロにとどまったサトノギャラント、洋芝でこそのレインボーダリア、オペラハウス産駒のメイショウウズシオも魅力が大きい。
押さえをトウケイへイロー、トウカイパラダイスの2頭にしたい。