◆さらに高い地点に向かう 雨の影響を受け、きわめて判断の難しい馬場状態の中で行われた中山1600mのハンデ戦は、稍重馬場で1分34秒6(46秒1-48秒5)。1000m通過は57秒9。レース上がりは「36秒7」。前後半のバランスの数字が示すほどは厳しい流れではなかった気もするが(実際、緩いペースだったと振り返る騎手が多かった)、パンチ力の乏しい馬、渋り気味の馬場を気にする馬にとって追い比べになってからが苦しいマイル戦だった。凡走した人気馬が多い。
スランプの続いた
カレンブラックヒル(父ダイワメジャー)の復活は、これで安田記念に向けて再び大きな展望が広がったから喜ばしい。途中で行きっぷり抜群の強気なトリップにハナを譲り、一度は4番手くらいまで下がってしまったレース運びは、またまたちょっと弱気の虫が…とも映ったが、差し返すように伸びて勝ったから、絶妙の判断だったことになる。
57.5キロのハンデを考えれば、着差は少なくとも総合力上位の実力勝ちとはいえるが、小差に伏兵
カオスモス、
インプロヴァイズ、
エールブリーズ(順に、9,8,12番人気)がなだれこんだ結果を振り返ると、レースレベルは必ずしも高くない。ここはさらに高い地点に向かうための復活の契機のレースにすぎなかったと、さらなる上昇を目ざして欲しい。2005年のこのレースで復活してマイルのチャンピオンに到達した父ダイワメジャーと同じように。
3番人気の
トリップは手ごたえ上々。そのまま押し切り濃厚とみえたが、直線中ほどで突然、「左前浅屈腱不全断裂」の不運。本格化していたところであり、間違いなく勝ち負けだったと思えるから残念というしかない。
2番人気の
レッドアリオンは、もまれて置かれる形になると苦しくなる馬だけに、この馬場で行き脚がつかなかったのが予想以上に応えたのだろう。見せ場がなかった。
問題は、1番人気の
コディーノ。レース後、記者仲間で「直線あと1ハロンの地点で馬券が買えたら、どの馬を買う?」。「それでもコディーノだろう」。そんな見解に多くの記者が納得した。
でも、伸びかけて勝ち負け必至と思わせたはずが、終わったら掲示版も危なくなっている。かかえる悩みは深刻である。素晴らしい状態に仕上がり、1番人気に支持されるのも当然の資質に恵まれ、その通りの能力を秘めている。ところが、コディーノは賢く素直である。調教でも、レースでも「苦しくなったらやめていい」ことを、もう学んでしまった気がする。