大物が出現すること必然
サンデーサイレンスの血が飽和状態に近づく前から、異父系の種牡馬が求められていた。欧州タイプの名馬が連続して出現した時期と、円高にも円安にも揺れる大きな波がうまく重なったといわれる。
立て続けにヨーロッパのチャンピオン級が種牡馬として輸入され、まず、ハービンジャー(父ダンジリはデインヒル直仔)が大成功を予感させている。相手の繁殖牝馬がサンデーサイレンス系の血を引く馬がほとんどだったこともあるが、ここまでに勝ち上がった20頭の現3歳馬の「母の父」は、18頭までがサンデーサイレンスか、その直仔の種牡馬であり、残る2頭は「祖母の父」がサンデーサイレンスである。最初から、サンデー系の牝馬のための種牡馬の1頭として輸入されたハービンジャーは、サンデー牝馬がいたから良かったのか、逆に、サンデー牝馬のほうがハービンジャーが相手になってくれて良かったのか、難しいところだが、ハービンジャーはサンデー系の血を味方に引き入れたことは確かである。ほとんどサンデー牝馬だから、ニックスうんぬんはいえず、案外の産駒もかなりいる。
勝ち上がった20頭が記録する22勝の平均距離は1831.8mであり、とてもフレッシュマンサイアーランキング1位になった数字ではないところが、ハービンジャー産駒の特徴。また、そういう勝ち距離だから、ここまでの勝ち上がり率は、新種牡馬ランキングトップとは思えない約22パーセントにとどまるのも特徴である。距離適性とは別に、サンデーサイレンスの柔軟なスピードをうまく取り込めなかった産駒は、かなり凡庸でもある。
迫力のパワーと底力で、少し乱暴なくらいのレースを展開させて勝つ産駒もいるあたりはやや異なるが、現在活躍している種牡馬では、産駒の成績は、ステイゴールド、マンハッタンカフェに近いものになるのではないか。平均点は高くなくても、大物が出現すること必然。さらに、成長力は互角以上のはずである。
まだ、半年くらいだから、何年かが経過すると、もっと異なる産駒が誕生するだろうが、ダートで勝った馬は1頭しかいない。フットワークが空回りする産駒がいる。出走例は少ないが、短距離は合わない。マイル戦もレベルが低いといいが、高速のハイレベルのレースは合わない危険大。ロカの阪神JF挑戦は、G1だから仕方ないが、完成度が低いというだけでなく、正解ではなかったかもしれない。
器用な小足はつかえず、爆発するパワーはあってもディープインパクト産駒が秘める鋭い瞬発力は疑問なので、インを狙うような小細工は合わない気もする。
ベルーフは、たまたまだが、種牡馬としてのハービンジャーに似た一面のあるステイゴールドのファミリーである。前回は馬群のインに突っ込んだが、スケールを生かすには外枠のほうがいいだろう。中山の2000mはコースロスもほとんどない。もう1頭のハービンジャーの
クラージュシチーは、そう遠くない近親馬にメイショウサムソンがいるから、このあとの成長が非常に楽しみである。2戦目に騎乗してぶっちぎった菱田騎手に戻り、強気な先行策がありえる。
ブラックバゴ、
クルーガー、
タケルラムセス、さらには
コスモナインボール、
ソールインパクトなど、候補の多い好カードだが、ここはハービンジャー産駒に大きく注目したい。