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週刊サラブレッドレーシングポスト

  • 2002年07月17日(水) 00時00分
 アメリカから、つい先頃引退したクリス・マッキャロンと、現役のトップ騎手ゲイリー・スティーヴンズが映画出演という楽しいニュースが聞こえてきた。

 2001年春に出版されて以来、全米中で売れまくりベストセラーとなった『アメリカの伝説/シービスケット』が映画化されることになり、2人の出演が決まったのだ。

 『アメリカの伝説/シービスケット』はそのタイトル通り、1935年から1940年にかけて活躍した名馬シービスケットの生涯を描いた小説である。デビューから17連敗。2千5百ドルでもクレイミングされなかったというどん底から這い上がり、当時の歴代最高賞金収得記録を達成することろまで登りつめたシービスケットの現役生活は、それだけでもアメリカ人が好むサクセスストーリーなのだが、これを描いた女性競馬記者ローラ・ヒルンブランドの筆が冴え渡ったこともあって、競馬サークルの枠を跳び越えた大ベストセラーとなったのである。

 物語の見せ場は2つ。1つは、シービスケットが5歳時に組まれた、前年の3冠馬ウォーアドミラルとのマッチレース。勝負にこだわるはずのマッチレースで、シービスケットがトラックレコードで快勝した伝説の一戦である。

 もう1つが、脚を傷めて引退し種牡馬入りしたシービスケットが、歴代最高賞金収得記録を樹立する目的で現役に復帰して出走した1940年のサンタアニタH。このレースの前年の覇者カヤックを斥けて優勝し、米国競馬史上初の収得賞金40万ドル突破を果たしてスタンド前に引き揚げてきたシービスケットを、満員の観衆がスタンディングオベーションで出迎えた光景は、今も『アメリカ競馬史上で最もドラマティックな瞬間』と語り継がれている。

 いずれにしても、映画でもハイライトとなるべきはレースシーンであり、キャスティングの上で達者な乗り役は不可欠なのだ。と言うわけで、件の二人に白羽の矢が立ったのである。

 シービスケットの主戦で、冷静沈着な騎乗ぶりから『アイスマン』と呼ばれたトップジョッキーのジョージ・ウールフ役をやるのがゲイリー・スティーヴンズで、クリス・マッキャロンはウォーアドミラルの手綱を握ったチャーリー・カートシンガーを演じるそうだ。

 スティーヴンズによると、撮影期間は今年の10月から来年の3月までの半年間で、この期間中は、週末のビッグレースに騎乗する以外は原則的に撮影のスケジュールを優先するという契約内容になっていると言うから、相当に本格的な役者稼業になるようだ。

 完成を楽しみに待ちたいと思う。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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