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ゴールデンシックスティの復帰戦など 4月末に行われる香港チャンピオンズデーの見どころは?

  • 2024年04月10日(水) 12時00分

ラッキースワイネスは復活劇を見せるも…


 7日(日曜日)に香港のシャティン競馬場で行われた開催には、芝1600mのチェアマンズトロフィー、芝1200mのスプリントCという、2つのG2戦が組まれていた。

 このうち、G2スプリントCは、オッズ2倍の1番人気に応えてラッキースワイネス(セン5、父スワイネス)が優勝を飾った。こう記すと、いたって順当に収まったレースだったように見えるが、実情はそうでもなかった。

 競馬ファンならご存知のように、ラッキースワイネスは昨シーズン(2022年/2023年)の香港チャンピオンスプリンターである。

 ニュージーランド産馬で、NZBレディトゥラン市場にて9万新ドル(当時のレートで約663万円)で購買され、22年2月に香港でデビューしたのがラッキースワイネスだ。3歳時を7戦5勝で終えた後、重賞クラスで戦うようになった4歳時の活躍は見事だった。G1センテナリースプリントC(芝1200m)、G1クイーンズシルヴァージュビリーC(芝1400m)、G1チェアマンズスプリントプライズ(芝1200m)の3競走で構成されている「香港スピードシリーズ」を完全制覇し、500万香港ドルのボーナスを手中にするとともに、香港チャンピオンズアワードで最優秀短距離馬に選出されたのである。

 水準が高く層も厚いとされる香港短距離界で頂点に上り詰めたラッキースワイネスは、当然のことながら、今季もこの路線を牽引することが期待された。2023/2024年シーズンの初戦となったクラス1のハンデ戦(芝1200m)、続くG2プレミアボウル(芝1200m)は、いずれも2着に敗れたが、両競走ともにハンデ戦で、ラッキースワイネスは2戦とも135ポンド(約61.2キロ)のトップハンデを背負わされていた。初戦の勝ち馬が同馬より20ポンド(約9.07キロ)、2戦目の勝ち馬は同馬より14ポンド(約6.35キロ)もハンデの軽かった馬だったから、連敗も致し方ないところだった。別定戦に戻ったG2ジョッキークラブスプリント(芝1200m)、続くG1香港スプリント(芝1200m)はきっちりと優勝。この路線の最強馬としての貫禄を示した。

 この段階で同馬の通算成績は、21戦15勝、2着4回、3着1回で、複勝圏内率95.2%。唯一着外に敗れたのが、6着に終わった22年のG1香港スプリントだったが、3コーナーで他馬と接触した後に、内ラチ沿いのタイトなポジションに閉じ込められ、直線に向くと全く進路がなく、脚を余すだけ余しての敗戦だった。これをノーカウントとすれば、複勝圏内率は100%で、つまりは、堅実なことこの上ない競走馬がラッキースワイネスだったのである。ところが。2024年の初戦となった1月28日のG1センテナリースプリントCで、同馬はよもやの6着に敗れた。

 ここでも3コーナーで他馬との接触があったり、追い込む馬には不利なスローペースになったりというエクスキューズはあったが、それでも、勝ち馬から4.1/4馬身差の6着というのは、この馬としては負けすぎの印象だった。次走は3月10日のG1クイーンズシルバージュビリーCで、ここで陣営は鞍上を、直前の14戦のうち13戦で手綱をとっていたZ.パートンから、J.マクドナルドにスイッチした。だがここでも、ラッキースワイネスは5着に敗れた。ここもレース序盤で他馬との接触があったが、3コーナーからの競馬はスムーズで、直線では外に持ち出して追い込んだものの、勝ち馬に1.1/2馬身届かずに終わった。

 この路線の絶対王者で、しかも堅実なことで知られた馬が、2戦続けて馬券圏内から消えるというのは、ファンからすると異常事態である。2戦とも、レース後には獣医検査が行われ、格段の所見は認められなかった。もしも問題がメンタル面にあるのだとしたら、立て直すのは容易ではない。ファンとしては、おおいなる不安を胸に抱えて迎えたのが、7日のG2スプリントCだった。

 陣営はここで再び、騎乗者の交代を行なった。J.マクドナルドから、同じ豪州人騎手のH.ボウマンにスイッチしたのである。前半は11頭立ての9番手を追走。これは同馬の定位置だ。直線入口でなお、8番手だった同馬は、鞍上がひと呼吸待って追い出しにかかると、鋭い瞬発力を発揮。残り100mで先頭に立つと、2着馬との着差は1/2馬身だったが、ゴール前ではボウマン騎手が手綱を緩める余裕を見せての快勝だった。

 復活を果たしたラッキースワイネスだが、香港から非常に残念なニュースが聞こえてきたのが、G2スプリントC翌日の8日(月曜日)だった。ラッキースワイネスが左前脚に跛行を発症。獣医師による診断を受けたところ、左前管骨を骨折していることが判明し、長期休養に入ることが明らかになったのである。馬が順調であれば、同馬の次走は4月28日のG1チェアマンズスプリントプライズになったはずで、ここには、3月30日にメイダンで行われたG1アルクオーツスプリント(芝1200m)をトラックレコードで制したカリフォルニアスパングル(セン6、父スタースパングルドバナー)も出走の構えを見せている。

「輝きを取り戻したラッキースワイネス」vs「マイル路線からスプリント路線に転進して第2の充実期を迎えているカリフォルニアスパングル」という、至高の戦いが見られるはずだったのだが、幻に終わってしまった。

 もっとも、今年の香港チャンピオンズデイでは、昨年12月のG1香港マイル(芝1600m)を制した後、左前肢に故障を発症して休養していたゴールデンシックスティ(セン8、父メダグリアドーロ)が、G1香港チャンピオンズマイル(芝1600m)で戦線復帰を果たす予定となっていて、これはこれで、見逃せない一戦であることは間違いない。今年も例年同様、熱い香港チャンピオンズデイとなりそうである。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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