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週刊サラブレッドレーシングポスト

  • 2002年09月30日(月) 12時40分
 注目の凱旋門賞まであと数日となったが、ここへ来て有力馬の勢力分布に地殻変動が起きている。

 「あの馬が完調なら敵わない」と他陣営が一目置いていたのが、春に英愛ダービー連覇を果たした3歳馬ハイチャパラルだったのだが、そのハイチャパラル陣営の気勢が一向に上がらないのである。

 先週の土曜日、クイーンエリザベス2世Sが行われたアスコットでは、最終レース終了後にロックオブジブラルタルの公開調教が行われた。追いきり終了後、ザ・ロックについて聞かれたエイダン・オブライエン師はBCに向けた抱負を能弁に述べたのだが、記者の質問がハイチャパラルの現状に及ぶと、途端に歯切れが悪くなった。

 「長く休んでいた馬を大一番に向かって仕上げるのは難しいんだ...」。
 「最終的に出否を決めるのは、レース直前に血液テストをやって、それからにするよ...」。

 愛ダービーを制した後、秋のキャンペーンを睨んでキングジョージを回避したハイチャパラル。当面の目標である凱旋門賞へ向けてまずは9月7日の愛チャンピオンSに登録したのだが、直前の血液テストの結果が芳しくなくここを取り消し。続いて翌週のニエユ賞に矛先を切り換えたのだが、ここもやっぱり直前の血液テストが完調とは言いがたい結果を示したために再び回避。その後は22日にロンシャンで行われたプランスドランジュ賞を叩くプランも噂されたが、ここには登録すらせず、結局凱旋門賞はぶっつけ本番で臨むことになった。

 それでも、稽古が足りて仕上がっていれば、春に見せた実力からこの馬が本命視されてもおかしくはなかったのだが、管理者の発言がここまで弱気では、とてもではないがファンが安心してこの馬の単勝を買える状況ではなくなってしまったのである。

 御承知のようにオブライエン厩舎ではこの夏に集団風邪が流行り、ハイチャパラルだけでなく多くの管理馬がその影響を受けた。推察すると、その後遺症が師の予測以上に尾を引いていると考えるのが妥当なところか。ことに、師が早くから『ニジンスキー級』と絶賛していたホークウィングが、秋の2戦(愛チャンピオンS、クイーンエリザベス2世S)を連敗したことが、師にはショックだったようだ。師としては、自信を持ってハイチャパラルを送り出す心境にはなれないのだろう。

 となると、今年の凱旋門賞は一転して乱戦模様となる。目下のオッズでは仏ダービー馬スラマニの評価が高いようだが、当日の馬場や展開次第では、日本から参戦するマンハッタンカフェも含めて、十指に余る馬にチャンスがある、稀に見る混戦になると見ている。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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