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新女王の予感

  • 2002年10月06日(日) 16時24分
 10月2日、船橋「クイーン賞」。ビーポジティブが武豊を背に期待通りのパフォーマンスをみせた。パフォーマンス――個人的にはあまり好きではない言葉だが、今回の場合、どうもそれがぴたりとハマる。売り出し中のアイドルがキャンペーンに出かけ、思惑通りその存在を十分にアピールしてきた、そんな感じ。もちろん馬場、展開、好騎乗…、すべてうまくいっての結果には違いないが。

 ポジティブを肉眼で見たのは初めて。パドックではトモの張り、バランスのいい体型が目を引き、返し馬でも四肢のよく伸びた柔らかなフットワークが印象的だった。トゥザヴィクトリーの全妹。その先入観を割り引いてもやはり素直に惚れ惚れする。少しテンションは高めだが、イレ込みではなく馬の醸し出す活気というやつだろう。ローズS大敗後、しかし中間難なく立て直したというプラス2キロ。1000万条件からいきなり統一G挑戦も、馬を実際に見てしまうと、逆に陣営の狙い、勝算にうなずかされる。

クイーン賞(サラ3歳上牝馬、別定、統一G3、1800m重)

◎(1)ビーポジティブ   (52・武豊)1分50秒6
△(2)ジーナフォンテン  (55・張田)3
○(3)カーディアンゴット (54・佐藤隆)2
△(4)ユレルオモイ    (55・岡部)1.1/2
△(5)メイプルベガ    (54・金子)3/4
………………………………………………………
▲(7)ミスダイアン    (54・吉田稔)
 (12)タイムフェアレディ (55・後藤)

 単170円 馬複510円 馬単740円
 3連複1620円 3連単5200円

 逃げを予想された金沢トゥィンチアズがスタートで少しアオり、ポジティブがごく自然流にハナを切った。テンを3F35秒0だから少し速いが、馬の気分に合わせたという意味でマイペース。「現時点で姉(トゥザヴィクトリー)と較べてはかわいそうだけど、カカらない気性が何より」と武豊騎手。3コーナーあたりでハミを与え、直線あと1ハロンから気合を入れる。確かで力強い脚さばき。ラスト1F13秒5、追って伸びたかどうかはともかく、後続と3馬身がひとまず器の違いにみえた。1800m1分50秒6の走破時計は脚抜きのいい馬場を考慮しても合格点。春のマリーン賞、プリエミネンスがカーディアンゴットにつけた4馬身と比較して、この先順調なら“新女王”の戴冠も近いだろう。「デビュー時はソエの影響で芝では突っ張って走っていた」と池江調教助手。資質の高さゆえ選択肢も当然広がる。一つタイトルを得て今後どこに照準を絞ってくるか。

 ジーナフォンテンは敗れて強しの2着だった。前走スパーキングレディーCを制して2か月の充電。当時14キロ減の馬体をきっちり戻して出走し、今日は3〜4コーナー、外からまくり気味に追い上げてみせた。体調万全ならもう少し差のない勝負になったはず。実戦での集中力、勝負根性が素晴らしく、南関東牝馬No.1もほぼこの一戦で確定だろう。カーディアンゴットは末脚を温存して直線勝負。「重いぶん伸びなかった」が鞍上のコメントだが、先着ジーナとは根本的に能力差がありそうだ。ミスダイアンは勝負どころでいったん2番手をキープしたが終いバッタリ。本来短〜マイル向きということか。ユレルオモイは好位のまま伸びそうで伸びず、結果からはメイプルベガ級とほぼ能力互角のジリ脚タイプ。先行して大バテしたタイムフェアレディはどうやらダート適性がない。

     ☆      ☆      ☆

南部杯(盛岡10月14日、サラ3歳以上、別定、統一G1、1600m)

◎スターリングローズ(福永祐)
○マキバスナイパー(左海)
▲キングリファール(佐藤隆)
△トーホウエンペラー(菅原勲)
△ノボトゥルー(武豊)
△スターキングマン(四位)
△トーヨーデヘア(関本)
 トロットスター(蛯名)
 フジノコンドル(安藤勝)
 (騎手は一部推定)

 スピードの絶対値、目下の勢い、ひとまずスターリングローズには格好のレースとなった。前走シリウスS快勝で重賞2勝目。ディヴァインシルバー、ヤマカツスズラン、それなりの快速馬をいともあっさり競り落とし、ゴール際まだ余裕があった。当時3ヵ月半ぶりを考えるとまだ上積みも考えられる。ベストより1F長い1600mだが、父アフリートをイメージすればさして問題ないだろう。盛岡のタフなダートもこなす可能性が大。4走前名古屋「かきつばた記念」で、サウスヴィグラス(レコード)の1/2馬身差2着がある。

 ただしひいきも含め逆転に期待したいのは船橋マキバスナイパー。とにかく半信半疑の前走「日本テレビ杯」で素晴らしい競馬をした。キングリファールの作った厳しい流れを2番手から軽く気合をつけて横綱相撲。1800m1分49秒6は、これまでのイメージを変えるスピード能力。父ペキンリュウエン(その父ギャラントマン)。もともと意外性のある馬で、年齢はさておき、昨春帝王賞をK.デザーモ鞍上に勝ったとき以上の“旬”を感じる。

 実績から本来単穴以下には落とせないトーホウエンペラーだが、帝王賞、ブリーダーズGC、どこかピンとこないレースぶり。本質的にマイル向きとも思えず、ここはケレン味なく行きそうなキングリファールを一つ上位に取り上げた。ダービーGP2着スターキングマンは古馬相手の実績がなく、もう一度試金石だろう。ノボトゥルーは叩いての良化と鞍上の腕が頼り。穴はこの夏岩手へ転厩、いいリズムが戻りつつあるトーヨーデヘア。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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