3月5日大井「金盃」は、コアレスハンターの完璧な逃げ切りだった。外枠ながらこれといった同型不在。絶好のスタートから滑るようにインへ切れ込み、道中悠々淡々とラップを刻んだ。1000m通過62秒8、上がり37秒8。しかも最後の1Fを12秒5でまとめている。結果的に相手を自分の土俵に引きずり込んだ、そんな競馬か。エスプリシーズはその2番手につけたものの終始手応えがパッとせず、捻挫休養明けのベルモントアクターは行き脚がつかず向正面まで最後方を強いられた。4コーナー、内田博騎手は後続の気配をうかがいつつワンテンポ仕掛けを遅らせ、1ハロン標識でようやくステッキ一発。あっという間に後ろがちぎれ、最後は6馬身差の独走だった。軽い馬場にせよ2000m2分5秒5は、大賞典ゴールドアリュールをコンマ1秒凌いでいる。他馬の凡走はひとまず置いて、この数字なら大きく割り引く根拠もない。気分よく走ったときの逃げ馬の怖さ。それだけなのかどうか。正直まだ結論を出しかねている。
金盃(サラ4歳以上、ハンデ、南関東G2、2000m重)
△(1)コアレスハンター (55.5・内田博) 2分05秒5
△(2)オンユアマーク (56・鷹見) 6
(3)スピーディドゥ (55・納谷) 1
◎(4)エスプリシーズ (55・森下) 鼻
△(5)バンケーティング (56・的場文) 1
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○(8)ベルモントアクター (55.5・石崎隆)
▲(9)クールアイバー (53・張田)
△(10)スプリングシオン (55・左海)
単430円 馬複3130円 馬単5050円
3連複252790円 3連単543520円
コアレスハンターは、昨秋「かちどき賞」を勝った当時、すでに2000m2分5秒6の時計がある。脚抜きのいい馬場に強いこと。大賞典後、条件ベストのここに照準を絞っていたこと。ただここから再び統一Gを考えると、心身両面でもう一段グレードアップが必要だろう。半信半疑。手頃な相手に自分の競馬をしたときは強いが、そうでないと壊滅。少なくともこれまでのイメージはそうだった。次走は「マイルグランプリ」。乗りに乗る内田博騎手とのコンビで、さらに飛躍があるかどうか。ただし、「本物でしょう。今日の手応えなら好位から差す競馬もできる」。本人のコメントはあくまで力強かった。
期待したエスプリシーズ。レース運び自体は不満もなく、それだけに失速が不可解だった。森下騎手「使い詰めで馬に疲れがある。今日は返し馬からそれを感じた」。終わってみればそのあたりしか敗因が浮かばない。パドックなど馬体、気配とも良好で、それにしては本場場に出て返し馬が軽い、そんな危惧がちらりと浮かんだのは事実である。昨年11月「ベイシティC」からカムバック後5戦。力走を続けてイメージ以上に疲労、ストレスが蓄積するタイプなのかもしれない。左回り=右回りの落差も、不安点として残ってしまった。いずれにせよここは焦らず、馬と相談しながら巻き返しを図ってほしい。
インを突いたスピーディドゥ3着は、今開催素晴らしくバイオリズムがよかった納谷騎手の好騎乗が大きいだろう。ベルモントアクターは無敗神話が途切れた今、石崎騎手が先を考えて乗っていると判断したい。休み明け、何とも反応の鈍かったスプリングシオンだが、この後帝王賞ステップの中山「日経賞」を予定している。芝の長距離、ガラリ一変を期待するのは記者の身びいきだけかどうか。それでもカツアール、ヒカリデュール、イナリワン…、かつて南関東一流馬の多くはこのパターンで新たな可能性を開いてきた。大穴の資格はある。
☆ ☆ ☆
しらさぎ賞(3月12日、浦和、サラ3歳別定、1600m)
◎ウィンブロー (54・石崎隆)
○ウツミジョーダン (55・佐藤隆)
▲グリンゼファー (56・内田博)
△ペイトリオティック (54・張田京)
大半がここまでクラシック組と別路線を歩んできたが、中でウィンブローは十分羽田盃、東京ダービーが狙える馬だ。昨秋鎌倉記念、パレガルニエの2着。中団から小気味よく末脚を伸ばし、1500m1分35秒2をマークしている。前走3か月ぶりの浦和「オープン」を試走してここ照準。父ジェイドロバリー。今後の成長しだいでクラシックに届く。
そのオープンを快勝したウツミジョーダンは、昨暮れ岩手・南部駒賞3着で、トロットサンダー×ミルジョージの血統らしく切れるタイプ。基準馬として見逃せないグリンゼファーだが、もう上積みが見込めないぶん3番手が妥当だろう。むしろ吉田勝己氏がオーナーブリーダーの良血ペイトリオティックに魅力。
☆ ☆ ☆
3月8日、中山「オーシャンS」をネイティヴハートが勝った。四角10番手から豪快な大外一気。1分9秒7、ショウナンカンプの5着だった昨年より大きく時計がかかったのが勝因だが、それでも自身4か月ぶりで8分程度。何よりその状態で「高松宮記念=G1」の出走権を取ったのだから夢がふくらむ。ちょうど1年前、岩手から小林(大井)・大山一夫厩舎転厩。「地方在籍のまま中央G1をめざしたい」というオーナーサイドの意向。転厩後、大井を使ったのはただ1度(マイルグランプリ・11着)だけで、あとは一貫JRA芝挑戦を続けてきた。いわゆる「外厩制度」のデモンストレーションでもあるだろう。久々に「追う技術」をアピールした石崎隆騎手。とにかく次が待ち遠しい。
その5分後、阪神「チューリップ賞」を安藤勝己騎手がオースミハルカで制した。馬自身の能力はおそらく紙一重。直線狭いところを一気に突き抜けた判断力、勝負勘に惚れ惚れする。さらにいえばその10分前、中京ではメイン「中日スポーツ杯」を園田・岩田康成騎手が勝っている。「ダブル免許問題」に依然否定的な姿勢を示すJRA。ジョッキー自身はすでに十分な突破口を開いている。あとはファンの後押し…やはりそういうことになるのだろうか。