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障害センスもなかなかのステイゴールド産駒

  • 2012年08月03日(金) 12時00分
 9歳馬のエムエスワールドが、小倉サマージャンプを快勝した。障害の重賞勝ちは、今年5月の京都ハイジャンプに次いで、これで2つ目である。

 父のステイゴールドはオルフェーヴル(三冠馬)、ドリームジャーニー(有馬記念、宝塚記念)、ナカヤマフェスタ(宝塚記念、凱旋門賞2着)、ゴールドシップ(皐月賞)らの活躍で、すっかりクラシック血統の地位を築いている。

 しかし、障害のセンスもなかなかのものだ。ステイゴールド産駒で障害の重賞勝ち馬第一号は、2011年の中山グランドジャンプを勝ったマイネルネオスだった。

 1000万条件の特別戦(芝2600m)を勝つなど、平地の脚力もまずまずだった。しかし、平地では頭打ちとなり、6歳の春になると障害へ転向。重賞では勝ち切れないレースを繰り返していたが、8歳になっていきなりJ・G1の中山グランドジャンプで、初重賞勝ちを果たした。このあたりは、いかにもステイゴールド産駒らしい。

 エムエスワールドもこのマイネルネオスと同じ2003年生まれで、ステイゴールドの初年度産駒になる。2歳夏の新馬戦を8馬身の圧勝。重賞には縁がなかったが、3歳春にオープン特別を2勝したほどの馬だった。

 母系はかなり貧弱である。しかし、初期のステイゴールドはこの手の繁殖牝馬を相手に、オープン馬を次々と出していった。そこにステイゴールドの底知れぬ何かを感じたものである。

 エムエスワールドも平地では頭打ちとなり、8歳の6月になって障害入り。すると、みごとに蘇り、今年9歳になってから完全に本格化した、平地で稼ぎ、頭打ちになると今度は高齢になっても障害で稼ぐ。馬主にとって、これほどありがたい血統もない。

 しかも、初期の産駒の値段は極端に安いときている。馬主の投資効率という点で、ステイゴールドほど満足度の高い種牡馬もないといえる。今後、産駒の障害入りがより活発化することだろう。

血統評論家。月刊誌、週刊誌の記者を経てフリーに。著書「競馬の血統学〜サラブレッドの進化と限界」で1998年JRA馬事文化賞を受賞。「最強の血統学」、「競馬の血統学2〜母のちから」、「サラブレッド血統事典」など著書多数。

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