9歳馬のエムエスワールドが、小倉サマージャンプを快勝した。障害の重賞勝ちは、今年5月の京都ハイジャンプに次いで、これで2つ目である。
父のステイゴールドはオルフェーヴル(三冠馬)、ドリームジャーニー(有馬記念、宝塚記念)、ナカヤマフェスタ(宝塚記念、凱旋門賞2着)、ゴールドシップ(皐月賞)らの活躍で、すっかりクラシック血統の地位を築いている。
しかし、障害のセンスもなかなかのものだ。ステイゴールド産駒で障害の重賞勝ち馬第一号は、2011年の中山グランドジャンプを勝ったマイネルネオスだった。
1000万条件の特別戦(芝2600m)を勝つなど、平地の脚力もまずまずだった。しかし、平地では頭打ちとなり、6歳の春になると障害へ転向。重賞では勝ち切れないレースを繰り返していたが、8歳になっていきなりJ・G1の中山グランドジャンプで、初重賞勝ちを果たした。このあたりは、いかにもステイゴールド産駒らしい。
エムエスワールドもこのマイネルネオスと同じ2003年生まれで、ステイゴールドの初年度産駒になる。2歳夏の新馬戦を8馬身の圧勝。重賞には縁がなかったが、3歳春にオープン特別を2勝したほどの馬だった。
母系はかなり貧弱である。しかし、初期のステイゴールドはこの手の繁殖牝馬を相手に、オープン馬を次々と出していった。そこにステイゴールドの底知れぬ何かを感じたものである。
エムエスワールドも平地では頭打ちとなり、8歳の6月になって障害入り。すると、みごとに蘇り、今年9歳になってから完全に本格化した、平地で稼ぎ、頭打ちになると今度は高齢になっても障害で稼ぐ。馬主にとって、これほどありがたい血統もない。
しかも、初期の産駒の値段は極端に安いときている。馬主の投資効率という点で、ステイゴールドほど満足度の高い種牡馬もないといえる。今後、産駒の障害入りがより活発化することだろう。