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競走時代のイメージと現実にギャップがあるクロフネ

  • 2012年08月10日(金) 12時00分
 8月7日現在、クロフネが2歳種牡馬ランキングのトップに立っている。ストークアンドレイが函館2歳Sを勝った賞金が効いているが、2歳戦はまだ始まって2か月。秋になればディープインパクト以下、サンデー系の大物産駒が登場してくるから、夏限定の“三日天下”の可能性が高い。

 しかし、もともとクロフネは2歳戦に強い血統だ。産駒は仕上がりに優れ、天性のレースセンスがあり、キャリアの浅い2歳戦で大人びたレースをする。ダートにも強く、芝はスピード、瞬発力勝負の高速馬場より、いくらか荒れて時計のかかる馬場、雨で渋った馬場が合う。むろん、函館や札幌の力のいる芝にも向いている。

 今年から2歳戦が2週早まり、これに合わせて函館2歳Sの実施も早くなった。出走馬の多くがキャリア1、2戦。生まれ持った血統的なレースセンスが、より問われることになるだろう。

 以前ならサクラバクシンオー、フジキセキ、タイキシャトルあたりが夏の2歳戦に強かったが、どれも年齢的にピークを過ぎて往時の勢いがない。結果としてクロフネが浮上したとも言える。

 それにしてもクロフネ。ストークアンドレイが函館2歳Sを勝利して、これで産駒のG重賞勝ち馬は10頭になったが、このうち9頭が牝馬という異常な偏りを見せている。牡馬のG重賞勝ち馬は、初年度産駒のフサイチリシャール(朝日杯FS)だけなのだ。

 競走時代のクロフネは、「荒武者」「野武士」といった男っぽさを漂わせていた。だから、てっきりオス血統だと思っていたが、現実はまるで正反対である。

 現役の牡馬に、重賞勝ち予備軍がいないわけではない。3歳馬には今春のクラシック戦線で活躍し、将来的にはダートで大成しそうなトリップ。古馬にはダートのオープンで活躍中のトウショウカズン(根岸S2着)らがいる。

 先々は状況が変わることも予想されるが、これほど競走時代のイメージと現実にギャップのある種牡馬も珍しい。

血統評論家。月刊誌、週刊誌の記者を経てフリーに。著書「競馬の血統学〜サラブレッドの進化と限界」で1998年JRA馬事文化賞を受賞。「最強の血統学」、「競馬の血統学2〜母のちから」、「サラブレッド血統事典」など著書多数。

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