競馬が世の中を反映するという見方をされた方が、かつていらっしゃいました。経済評論家の三鬼陽之助さんです。昔、ダービーの日にゲストでラジオに御出演いただいたときのことでした。不景気の年は、地味でも渋太い馬をという助言でしたが、この考え方でダイナガリバーのダービーを射止めました。
昭和61年、少々冷たい風が吹いていた世相で、こういう年はベテラン騎手の地味目の馬ということで、皐月賞で8着に敗れていたこの馬をダービーで狙ったのです。フェスティバルやインタビュー取材でこう発言した記憶は、今でもはっきり残っています。
ところでこの春、大混戦の弥生賞を制したのがエイシンチャンプ。堂々と王道を歩んでいるのに、何故か大本命にならない歯がゆさを抱えるパートナーの福永祐一騎手。もう1頭のお手馬ネオユニヴァースをスプリングSではデムーロ騎手に譲りました。
ところが、この馬もどこか地味な雰囲気です。きさらぎ賞でサイレントディールを下したときが3番人気。そして、スプリングSでは本命の座をサクラプレジデントに譲っていました。
前哨戦を勝ち抜いたエイシンチャンプとネオユニヴァース、果して、本番皐月賞でどういう評価になるのか注目されます。
一変ニ変するのかと思われていた牡馬クラシック戦線で、着実にステップアップしてみせた2頭は、いずれも瀬戸口厩舎。ひと昔前にオグリキャップで一世を風靡した瀬戸口調教師久々の晴舞台です。
この2頭の評価では、2歳牡馬チャンピオンで弥生賞を勝ったエイシンチャンプが実績では文句ないのですが、瀬戸口さんは、チャンプはじり脚だからと控え目、ユニヴァースの方が切れると語っていました。只共通しているのは、2頭ともせり合って強く、渋太いというところ。今の世相では、こういうタイプがぴったりなんですが、どうでしょう。