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魅力が遠のいていく交流重賞

  • 2012年08月24日(金) 12時00分
 8月14〜16日のお盆休みに、地方競馬のJPNダートグレード競走が三つあった。盛岡のクラスターC(JPNG3)、佐賀のサマーチャンピオン(JPNG3)、門別のブリーダーズゴールドC(JPNG2)である。

 今に始まったことではないが、三つとも、中央の所属馬が上位を占めた。クラスターCは1〜3着、サマーチャンピオンは1、3着、ブリーダーズGCは1〜5着までがすべて中央の所属馬だった。

 この期間中、地方競馬条件交流競走(下級の一般レースだが、JRAが賞金を援助しているため賞金が高い)も6つあったが、こちらも勝ったのはすべて中央の所属馬だ。

 庇(ひさし)を貸して母屋を取られる。まさにこの「ことわざ」がふさわしい。地方競馬は軒先を貸したばかりに、いつの間にか家全部を取られてしまっている。

 冒頭のJPNグレードレースも、JRAが資金を援助しているから、一般の重賞よりも賞金は高い。しかし、その賞金を持っていくのは、ほとんどが中央の所属馬だ。

 地方競馬の活性化のため、当初はそれなりの効果があった。中央のジョッキーがやってくるから、集客力もあった。しかし、今はすべてが形骸化し、ただただ事務的に行われる「中央所属馬の狩り場」となっている。

 それでも地方競馬の主催者が、「中央の馬が来るのは、馬券の売上増につながるからありがたい」というのであれば、とくに問題はない。

 しかし、先のブリーダーズGCは6頭立てで(当初は7頭だったが、1頭回避した)、うち5頭が中央の所属馬。配当も馬複が130円、馬単が220円、3連複が170円、3連単が440円である。これで馬券の売上が伸びるはずがない。

 おまけに、どこに行っても似たようなメンバーが集まる。馬券はかなり自由に買えるようになったが、肝心の中身が伴わない。

 JPNグレードレースの数を減らすなり、地方馬に有利な条件を設けるなり、そろそろ抜本的な改革をしなければ、交流重賞の魅力が遠のいていくばかりだ。

血統評論家。月刊誌、週刊誌の記者を経てフリーに。著書「競馬の血統学〜サラブレッドの進化と限界」で1998年JRA馬事文化賞を受賞。「最強の血統学」、「競馬の血統学2〜母のちから」、「サラブレッド血統事典」など著書多数。

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