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ゴールドシップに流れる血の力

  • 2012年09月28日(金) 12時00分
 ゴールドシップを見くびっていた。春のダービーを2番人気で5着に敗れたとき、「早熟馬」「スタミナ不足」の影がちらついたからである。

 オルフェーヴルと同配合だが、この馬は祖母の父にプルラリズム、曾祖母の父にトライバルチーフが入っている。どちらも仕上がり早の短距離血統で、2歳戦やマイル戦には強いが、長距離の重賞勝ち馬は見当たらない。3歳秋、古馬になって飛躍した馬も少ない。

 母系のベース自体は戦前から続く伝統の名牝系で、ステイヤーを追求してきた「下総御料牝系」である。母の父メジロマックイーンも、菊花賞、天皇賞・春(2回)を勝った名ステイヤーだから、スタミナ、成長力に富んでいる。

 だが、母のポイントフラッグは先のプルラリズム、トライバルチーフの特徴がよく出ていた。2歳の秋に新馬戦を勝ち上がり、3歳になって紅梅S2着、エルフィンS2着、チューリップ賞2着と好走したが、見せ場はここまで。以後は成績が頭打ちとなり、結局、1勝したのみで引退していった。

 ゴールドシップも神戸新聞杯の1週間前の追い切りでは、「まだ緩い」とか「成長が見られない」とか、不安な記事が目についた。そうなるとパドック写真も、ステイヤーらしくないコロンとした体型に見えてくるから不思議だ。

 だから神戸新聞杯は軽視したのだが、驚いたことに早目にグイグイ押し上げて、長い脚を使ってそのまま押し切る横綱相撲。母の父メジロマックイーンを彷彿とさせる勝ちっぷりである。

 このスタミナ、持久力、パワーは、次の菊花賞でさらに生きるだろう。父ステイゴールド×母の父メジロマックイーンによる、2年連続の菊花賞制覇が見えてきた。

 中山のオールカマーも、勝ったのはステイゴールド産駒のナカヤマナイト。その前の週には、オルフェーヴルが凱旋門賞の前哨戦、フォワ賞を勝っている。今秋のGI戦線は、ステイゴールド産駒から目が離せそうにない。
日本最強馬 秘められた血統
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血統評論家。月刊誌、週刊誌の記者を経てフリーに。著書「競馬の血統学〜サラブレッドの進化と限界」で1998年JRA馬事文化賞を受賞。「最強の血統学」、「競馬の血統学2〜母のちから」、「サラブレッド血統事典」など著書多数。

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