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菊花賞、ディープインパクト産駒の今後の奮闘に期待

  • 2012年10月26日(金) 12時00分
 菊花賞はゴールドシップが早目に抜け出すから、スタミナと持久力の勝負になる。そこまでの読みは当たっていたが、2、3着候補をすべてディープインパクト産駒で絡めてしまった。

 結果は2着馬の父がブライアンズタイム、3着馬の父がトーセンダンス。前者はかつて菊花賞に強かった血統で、後者も全兄が父子2代の菊花賞馬を3頭出している血統だ。

 ただ前者に、ナリタブライアン(三冠馬)を出した初期の勢いはない。途中からダート血統へと転じ、ピークを過ぎた23歳の種付けで出した産駒だ。かつての栄光を取り戻す力が、まだ残っているとは考えにくかった。

 後者も、セレクトセールで3億5175万円で落札された馬とはいえ、自身の競走成績は1戦0勝。産駒にディアアレトゥーサ(紫苑S、福島記念2着)を出してはいたが、並みの種牡馬という印象はぬぐえなかった。

 これならディープインパクト産駒のほうが面白い、と考えたのだ。甘かった、浅はかだったというべきか。それにしてもディープインパクトの牡馬陣。あの春の勢いはどこへ行ってしまったのだろう。

 父のサンデーなら有力馬が倒れても、代役が次々と浮上したものだ。しかし、3歳秋以降のディープインパクトの牡馬陣には、それがない。春のダービーがピーク、といった感じだ。「無理使いがきかない」「エンジンは最高級品だが、シャーシがそれに耐えられない」という厩舎の話を聞く。

 今年の日本リーディングサイヤーは、ディープインパクトでまず決まりだろう。産駒の勝ち上がり数、勝ち上がり率、アニーングインデックスなど、数字的にはどれも素晴らしい。

 だが、2世代を出して牡馬のクラシック馬は1頭のみ。残りはみなステイゴールドに持っていかれた。今週の天皇賞も登録馬は皆無である。ディープインパクトのファンに怒られるかもしれないが、何か物足りない。

 種牡馬デビューする前、「産駒が世界の競馬を席捲する」と大風呂敷を広げた立場としては、それでは困る。オルフェーヴやゴールドシップのような馬を、早く出してほしい。

血統評論家。月刊誌、週刊誌の記者を経てフリーに。著書「競馬の血統学〜サラブレッドの進化と限界」で1998年JRA馬事文化賞を受賞。「最強の血統学」、「競馬の血統学2〜母のちから」、「サラブレッド血統事典」など著書多数。

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