スマートフォン版へ

ヴィルシーナ悲願達成の陰で

  • 2012年11月09日(金) 12時00分
 牝馬三冠を達成したジェンティルドンナ。そのすべて2着に泣いたヴィルシーナ。2頭の厩舎、馬主は違うが、生産牧場はノーザンファームで共通する。

 今日、一流どころの厩舎、騎手は多くは、この社台グループと密な関係にあり、だからこそ良績を上げることができる。彼らの思惑に逆らえば、成績が途端に落ちるのは目に見えているから、なかなか逆らえない。

 本来、競馬は厩舎、騎手、馬主の思惑で動くものであり、一介の牧場が自由に動かせるものではない。しかし社台グループと、その関与する共同クラブが巨大化した今日、彼らの思惑が競馬に色濃く反映される。

 今週のエリザベス女王杯。ジェンティルドンナをジャパンCに回したのは、その思惑が働いたものだろう。無冠のヴィルシーナにもタイトルを取らせて、繁殖血統の価値を高めたいのだ。

 そもそもジェンティルドンナは共同クラブの馬だから、一口会員にレースの選択権はない。最近の有力馬は、生産牧場と共同クラブがリンクする馬が目立つ。このため一つの牧場が、必要以上に権力を持つ現象が生まれている。

 今日、社台グループと日高の生産牧場の格差は、血統のみならず、育成の技術や施設、外厩施設、一流騎手の手配など、すべての面において著しい。社台グループに逆らえば、調教師、騎手は成績不振に陥る。我われも仕事がやりにくい。

 日高の生産馬に、もう少し頑張ってもらわないと困る。その点、今週の京王杯2歳Sに、日高の生産馬が多く登録しているのは喜ばしいかぎりだ。

 ただ、次週の東京スポーツ杯2歳Sからはそうもいかなくなるだろう。今春のディープインパクト旋風は、ディープイブリランテの東京スポーツ杯2歳S制覇から始まった。今年も同じ流れになると思われる。

 ノウレッジの父ストーリトセンスは、ダーレーが導入して来春から日高で供用することになった。成長力と真の芝適性が、この京王杯2歳Sで問われることになる。馬券はこのノウレッジから買ってみたい。

血統評論家。月刊誌、週刊誌の記者を経てフリーに。著書「競馬の血統学〜サラブレッドの進化と限界」で1998年JRA馬事文化賞を受賞。「最強の血統学」、「競馬の血統学2〜母のちから」、「サラブレッド血統事典」など著書多数。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング