先週の中央競馬は、障害を含めて5つの重賞が組まれていたが、勝った馬はすべて非サンデー系だった。それどころか母系にもサンデーの血が入っていない。つまりサンデーの血が“一滴”も入っていない馬が、すべて勝ったことになる。
種牡馬ランキングのベスト10には、サンデーの後継種牡馬が7頭も顔を揃え、ブルードメアサイヤー・ランキングでもサンデーが圧倒。「父の父サンデー」もしくは「母の父サンデー」が、重賞の3着までを独占する競馬が恒常化している今日において、こういうことは珍しい。
ヴィルシーナの初タイトル勝ちを粉砕したレインボーダリアは、ブライアンズタイムが21歳のときの種付けだ。おまけに母のアロームが出産したのが、17歳時。かなりの高齢の両親から誕生している。
人間の世界なら子供が成人する前に、おそらく両親は死んでいるだろう。子供にとっては迷惑な話だが、サラブレッドの世界は人間が育ててくれるから、そういう心配はいらない。
それにしてもブライアンズタイム。先の菊花賞で2着に入ったスカイディグニティは、23歳時の種付けで誕生した産駒だ。1990年代に覇を競ったトニービン、サンデーはもうとっくに死んでしまっている。それなのに、いまだにこうして優駿を送り出すのだから頭が下がる。
ロベルト系は種牡馬寿命が全体に長い。たとえばクリスエスは、21歳時の種付けでシンボリクリスエス(年度代表馬)を、22歳時の種付けでクリスキン(英ダービー)を出している。
早田牧場の倒産とともに運命が暗転したブライアンズタイムだが、全盛期はサンデーと互角の勝負をしていた種牡馬だ。老いても、「ここ一番の底力、スタミナ、パワーはさすが」と唸らせるものがある。
先週のエリザベス女王杯は、ヴィルシーナに勝たせるためにお膳立てしたようなものだった。そんな好き勝手は許さぬとばかり、みごとに粉砕したレインボーダリアのエリザベス女王杯杯制覇は、ブライアンズタイムの意地の一撃だったと言えなくもない。