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新裁決ルール「邪魔して勝っても気分は良くない。僕は絶対に嫌や」

  • 2013年02月05日(火) 18時00分
1月のレース回顧第2弾。逃げ切ったトラバントや、橋口厩舎期待の3歳馬について、手応えをお聞きしました。また、「あれは去年までやったら完全に降着やったね」というAJCCの話題から、新裁決ルールの問題点をジョッキー目線でえぐります!

■汚いレースが増えるかもしれんねぇ…
──1月のレース回顧の続きですが、2勝目のトラバント(1月20日・京都11R・羅生門S)も強い競馬でしたね。

小牧 そうやね。僕自身、あれで本当に(ケガの具合が)大丈夫やっていうのを、アピールできたレースやったと思う。

──レース後のコメントで「気の小さいところがあると聞いていたのでハナへ」とおっしゃっていて、そういった馬の特徴を見事に生かし切った勝利だったんだなぁと。

小牧 僕も前に乗ったことがある池江厩舎のパルラメンターレが速いだろうなと思ってたんやけど、パッと外を見たら行かなかったんでね。それなら行き切ろうと。だから、たまたまやで。勝つときはあんなもん。道中は手応えが全然なくて、これは厳しいなぁと思いながら乗ってたんやけど、力があるんやね。しぶとかったわ。

──一度は前に出られながらも、最後は差し返す強さを見せましたね。

トラバントの勝利で復活アピール

トラバントの勝利で復活アピール

小牧 あれはね、人間の気持ち。僕の気持ちのぶんやね。

──残念だったところでは、昇級戦で1番人気に推されたタガノギャラクシー。ケガからの復帰初戦に勝った馬ですよね。

小牧 ああ、競馬ってやっぱりわからんね。1コーナーで内から行こうとした馬がいたから、そこでほんの少し無理をしたけど、すぐに落ち着いたから“これは楽勝するかな”って思ったくらいだったんやけど。4コーナーで持ったままで並ばれて、そこから全然ダメでしたわ。

──敗因はなんだと思いますか?

小牧 馬場やね。あの馬の場合、パサパサの馬場だと1800mはちょっと長いのかもしれない。前走は不良馬場とはいえ、すごい時計やったもんね(ダ1800mを1分50秒9。レコードを1秒1更新)。あんな時計で走るんやから、ここらじゃまだ足踏みしないだろ、と思って乗ってたんやけどね。競馬はわからんよ。ただ、タガノに関しては、湿った馬場だったらクラスの壁なんてないと思うよ。

──ほかでは、アンジュプリエール(クロフネ×テンシノキセキ)とドリーミートーツ(ジャングルポケット×ローズバド)という、橋口厩舎ゆかりの良血馬がデビューしましたね。アンジュは2着、ドリーミーは3着でした。

小牧 初出走は大概そうなんやけど、2頭ともびっしり追ってなかったからね。でも、チャンスが早くめぐってきそうなのは、テンシノキセキの仔かな(2月3日・3歳未勝利2着)。お母さんとはタイプが違うね。クロフネが強く出てると思う。ドリーミーのほうは、3着だったけど、思ったより走ってくれましたわ。調教の段階では、あんまりいい感触ではなかったんやけど、芝にいったら変わるんちゃうかなっていう期待はあった。初戦であれだけ走ってくれれば、使いつつ走ってくると思うわ(2戦目は8着)。

──続いて、前回も少しお聞きしましたが、新裁決ルールが実際に採用され始めて、やはりいろいろと問題点が浮き彫りになってきましたね。

小牧 この前のAJCCやろ? あれは今までやったら、間違いなく降着やと僕は思うけどね。ああいう競馬で降着にならないんやったら、どんな乗り方をしてもいいんかっていうことになってしまう。とくにGIとかね。

──ジョッキーのほうの言葉として「GIともなれば、2週くらい(の騎乗停止)なら…と思ってしまいかねない」というコメントがありました。

小牧 うん。GIなら余計になぁ。ちょっとね、納得がいかんね。騎手への制裁自体は、重たくなったけどね。

新裁決ルールには懸念も

新裁決ルールには懸念も

──周りのジョッキーの方は、どんなふうにおっしゃってますか?

小牧 みんな同じような意見ですよ。

──今後、このルールは見直されていくと思いますか?

小牧 変わるかどうかはわからんけど、苦情は増えると思うよ。あとは、汚いレースが増えたり…ね。前がカットされるようなことが増えれば、馬も故障が増えると思う。その一瞬で、グッと引っ張るわけやから。

──AJCCでも、引っ張ったジョッキーが立ち上がりかけてましたものね。

小牧 あれは危ないよ。ひっくり返ったら大変なことになるで。ゲシュタルトは危なかったねぇ。やられたほうは最悪やで。それこそ、スポーツという一面がなくなってしまう。結局、邪魔した邪魔していないより、それがなくても(トランスワープは)2着だったっていう判断なわけでしょ? でもそれって、わからんもんねぇ…。

──実際、トランスワープの大野騎手は「あの不利がなければ…」というコメントをされてましたよね。

小牧 ああ、そうなんや。そりゃあ、乗ってる本人が一番わかるもんね。

──新ルールは始まったばかりですが、いったい今後、どうなっていくのか…。

小牧 ほんとにねぇ。ゴール前、どうしても少々乱暴になるんちゃう? GIともなればなおさらね。でも危ないよ、ほんとに。ケガをしたら、元も子もないんやから。確かに邪魔されたら腹が立つけど、逆に邪魔して勝っても絶対に気分は良くない。僕は絶対に嫌や。

【次回の太論は?】
「園田と中央のダートの違いは?」というユーザーの質問から、過酷な冬競馬の話になり…。冬場のダート競馬の危険性や、体重との戦いとなる防寒対策について、ジョッキーだけが知る苦悩を赤裸々に語ります
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1967年9月7日、鹿児島県生まれ。1985年に公営・園田競馬でデビュー。名伯楽・曾和直榮調教師の元で腕を磨き、10度の兵庫リーディングと2度の全国リーディングを獲得。2004年にJRAに移籍。2008年には桜花賞をレジネッタで制し悲願のGI制覇を遂げた。その後もローズキングダムとのコンビで朝日杯FSを制するなど、今や大舞台には欠かせないジョッキーとして活躍中。

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