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戸崎圭太騎手(1)『川島調教師の涙と戸崎騎手の思い』

  • 2013年03月04日(月) 12時00分
「おじゃ馬します!」3月のゲストは戸崎圭太騎手。いよいよ中央のジョッキーとしての船出の時。今回は移籍直前の、最後の大井競馬開催中に直撃しました。戸崎騎手が語った現在の心境とは。またインタビューの後半には、恩師・川島正行調教師のインタビューも特別掲載します。

おじゃ馬します!

戸崎圭太騎手

赤見 :15年間所属した大井ですが、今開催が騎乗の最後ということで、どんなお気持ちで迎えられましたか?

戸崎 :何と言うか、まだ実感が湧かないんですね。でも、「本当に最後なんだな」という思いは、日を追うごとに強くなってきています。

赤見 :大井の調整ルームも最後ですよね? もう荷物も出していっているんですか?

戸崎 :いや、荷物はまだそのままです。少しお時間をいただいているので、開催が終わってから片付けようと思っています。

赤見 :じゃあお気持ちとしてはまだそこまで? いつ頃来そうですか?

戸崎 :開催の最終日(2月22日)に壮行会を企画していただいているので、そういうところで実感が出てくるのかなというのはありますね。

赤見 :じわじわときそうですね。パドックとか本馬場入場の時に、ファンの方から何か言われたりしますか?

戸崎 :はい。「中央に行ってもがんばれよ」とか、そういう温かいお言葉をたくさんいただくので、ありがたいですよね。

赤見 :うれしいですよね。野次はないですか!?

戸崎 :あぁ、今日はレースでだいぶ人気を裏切ってしまったので、野次もたくさん…。「早く(中央に)行っちゃえ」とかはありましたね(苦笑)。

赤見 :あはは(笑)。でも、以前に「人気で負けても野次がないと“あれ? 俺、人気ないのかな?”って心配になる」っておっしゃっていましたよね。

戸崎 :そうなんです。どんなものでも僕にかけていただいているお声なので、それはありがたいと思っています。

おじゃ馬します!

「JRA騎手になるお気持ちは?」

赤見 :その心構え、さすがです! これからいよいよJRAのジョッキーになるわけですけど、今のお気持ちというのはどうですか?

戸崎 :もう、楽しみがいっぱいですね。

赤見 :楽しみがいっぱいですか。調教は都内から美浦まで通われるんですか?

戸崎 :はい、通います。家族がこっちにいますからね。子供もまだ小さいですし学校にも行っているので、自分ががんばればできることですから。

赤見 :先日美浦に行かれていましたが、実際にご覧になってどうでしたか?
※2月14日に美浦トレセンに初来場。事務手続きや、所属となる田島俊明厩舎など関係者へのあいさつ回りを行った。

戸崎 :美浦に行くのは初めてでしたので、あの環境にはびっくりしました。調教の馬場がいくつもあるので、「攻め馬はどうやってやればいいのかな??」みたいな感じで(笑)。厩舎にも行きました。馬房も広いですし、施設は素晴らしいなというのを感じましたね。

赤見 :その所属ですが、何で田島俊明厩舎になったんですか?

戸崎 :地方競馬で自分をずっと支えてくださった方がいるんですが、その方の紹介なんです。そういう流れで田島先生にお世話になることになりました。

赤見 :そうだったんですか。田島先生もかなりお若いですよね。

戸崎 :そうですね。一緒に競馬を盛り上げられたらなというのは思いましたね。

赤見 :JRAの所属になったら「これがしたい」とかありますか? これからは平日の競馬がなくなるので、時間がだいぶできると思うんですけど。

戸崎 :うーん、これがしたいというよりも、生活のリズムがまるっきり違いますので、そこに早く対応していかないといけないなというのはありますね。いつもベストな状態でレースに臨みたいですし、そういうところで早く慣れていきたいと思っています。

赤見 :生活のリズムが変わるというところでは、今まで応援してくださったご家族にとっても。

戸崎 :そうなんですよね。これからは土日が競馬になるので、子供の学校の行事とかに行けなくなってしまうこともあると思います。でも、そういうところも受け入れてくれる家族がいるから、家族の支えがあるから、今の自分があります。そこも感謝したいです。家族は一番の宝ですからね。

赤見 :おぉ! 実はこのインタビューの直前に、川島正行調教師にもお話を伺ってきたんです。愛弟子である圭太さんの中央移籍についてお聞きしたんですが、涙を流されていました。

戸崎 :……そうなんですか。

おじゃ馬します!

恩師・川島正行調教師

◆川島正行調教師のコメント
「私にとっても、さみしいですけどね。家族がひとりいなくなった気持ち。そう思うとね……、涙が出るわ。親の前だってね、涙なんて流したことないよ。だからこそね、やっぱり向こうに行って頑張ってもらわないと。戸崎君にも言ったし、内田(博幸)君にも言ったんだけど、“お前たち、仲良くやれよ”と。“せっかく中央に行ったんだから、いっぱい支え合って、一緒に中央を盛り上げていけよ”って言ったんだよ」
※川島正行調教師の特別インタビューは3月25日(月)に当コーナーで公開いたします。

赤見 :家族がいなくなるのと一緒だ、って。

戸崎 :はい。

赤見 :先生の圭太さんに対する思いが、すごく伝わってきました。やっぱり先生がそういうふうに感極まると、圭太さんもかなりぐっと来るんじゃないですか? 先生、圭太さんから最初に合格の報告を受けた時にも涙が止まらなかったっておっしゃっていました。

戸崎 :合格発表の直後に、最初にお電話で報告をさせていただいたんです。だから、その電話の後かもしれませんね。

赤見 :どんな会話がお二人にあったんですか?

戸崎 :あの日は船橋でレースがあったので、朝はあまりゆっくりはお話できなかったんです。なので、夜に行われたNARグランプリの表彰式でお話させていただいたんですが、「おめでとう」って言っていただきました。

そうやって言っていただけて、本当に。それだけ思ってくださっているというのは、本当にありがたいです。僕にとって川島先生は、師匠であり親父であり……「家族」って、僕も同じような思いですね。やっぱり自分がここまで来られたのは、川島先生のお陰というのは事実ですから。川島先生には本当に、心から感謝したいです。(Part2へ続く)

◆次回予告
戸崎騎手と川島調教師の深い師弟の絆。次回のインタビューではお二人の軌跡をたどります。内田騎手の中央移籍をきっかけに、川島厩舎の門戸を叩いた戸崎騎手。デビュー年はわずか4勝だった戸崎騎手が、南関競馬不動のトップに登り詰めたわけとは。お二人の知られざるエピソード、公開は3/11(月)12時です。

◆戸崎圭太
1980年7月8日生まれ、栃木県出身。1998年に地方競馬教養センターを卒業し、公営・大井で騎手デビュー。2008年2009年、2010年2011年で全国リーディング獲得。2005年からは中央へも参戦し、2010年の武蔵野Sで重賞初勝利。2011年リアルインパクトで安田記念を制し、GI初勝利を飾る。2013年、3度目の挑戦でJRA騎手試験に合格。同年3月1日付けでJRA所属となった。

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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