今最も旬な男・戸崎圭太騎手。それだけに日々取材が殺到中。しかし、忙しい合間をぬって丁寧に取材に応じていらっしゃいます。その誠実な姿勢は学生時代から? 地方競馬教養センター時代の先輩後輩でもある戸崎騎手と赤見さん。当時の思い出話から、「トップジョッキー戸崎圭太」誕生のルーツが明らかに。(3/11公開Part2の続き)
赤見 :圭太さんに大きな影響を与えたフリオーソですが、その引退式で、圭太さんの涙を初めて見ました。
フリオーソの引退式で涙を…
戸崎 :ねえ。どんな言葉を言おうか前もって考えていて、最後ですし格好良く決めようと思ってたんですけど…、もう、言葉が出ないぐらい泣いていましたね。びっくりしました。
赤見 :自分でも?
戸崎 :はい。自分でもびっくりしました。ただ、フリオーソには本当にそれだけの思いがあるのは確かですので。肝心なところで言葉が出なかったのはちょっと悔しかったですけど、フリオーソには感謝の気持ちが伝わったかなとは思っています。
赤見 :ちなみに、何て言おうと思っていたんですか?
戸崎 :「フリオーソがいなかったら、今の自分はなかったです」って。それを、年末の大井での引退式の時に言えなかったので、年明けの船橋での引退式で改めて言いました。
赤見 :今回のようなインタビューの時も、話すことは事前に考えていますか?
戸崎 :考えているんですけど、頭の回転が良くないので、質問と違う答えをしてしまうことが多々あります(苦笑)。
赤見 :いやいや、そういう印象はないです。でも、圭太さんって、競馬学校の時から優等生でしたよね? 教官にも先輩にも後輩にも、馬にも好かれていました!
戸崎 :あははは(笑)。何が優等生だったかは分からないですけど、そうやって言ってくださる先生はいましたね。中学校の時も生徒会長をやっていましたからね。
赤見 :生徒会長だったんですか!?
戸崎 :はい。900人を代表する生徒会長でした! でも、これは前代未聞だって言われたんですが、期末テストで成績の順位が発表されるじゃないですか。「一番悪い順位で生徒会長になったのはお前だけだ」って。
赤見 :あははは(爆笑)。でも、何で生徒会長になろうと??
戸崎 :どんなことでも目立つのが好きなので。調子が良いのかなんなのか…。でも、目立つことは小さい時から好きでしたね。
キレイな礼にびっくり!
赤見 :そういうところが南関での華々しい活躍や、中央移籍にもつながっているんですかね。あと、これはずっと聞いてみたかったんですが、礼の仕方ってどこかで習いました? ビシッとした、すごくきれいな礼をされるじゃないですか。あれは昔からですか?
戸崎 :それは初めて言われました。でも、そういうところはきちっとしようとは思っていますね。
赤見 :やっぱり気をつけていらっしゃるんですか。先日のNARグランプリ授賞式でも思いましたし、競馬場のパドックでも、いつもきれいに礼をしてから馬に乗られるじゃないですか。本当に、常にきれいですよね。
戸崎 :ありがとうございます。しかも、そこで一番にスタートしたいんですよね。並んで、礼をして、最初の一歩目を自分が出たいんです。
赤見 :じゃあ、ちょっとフライング気味に(笑)?
戸崎 :出ていますね(笑)。
赤見 :その辺りも注目して見ていたいと思います。でもやっぱり、リーディングになってから顔つきが変わりましたよね。
戸崎 :ありがとうございます。あ、ちょっと待って。どういう風に変わったのか、それが聞きたい(笑)。
赤見 :キリッとして、顔つきもさらに格好良く…(笑)、ってちょっと笑っちゃった(笑)。
戸崎 :ええっ(笑)。でも、ありがとうございます!
赤見 :その辺り、ご自身ではどうですか?
戸崎 :その辺はまあ、周りが言ってくれることですので。ただ、JRAの試験の事もそうですけど、騎手になっていろんな経験をさせていただいて、少なからず自分の中で「成長」というのを感じる部分はあります。騎乗技術もそうでしょうけど、それだけではなく、いろんな意味で。だから、すごく意味のある人生を歩んでこられたなというのは思いますね。
赤見 :「ジョッキーを辞めたいな」と思ったことはありますか?
戸崎 :一度もないですね。
赤見 :大怪我した時も?
戸崎 :思わなかったです。
赤見 :それはすごいですね。結構みなさん1回ぐらいは「辞めてやる」って。
戸崎 :僕の場合は「辞めてやる」というよりも「悔しい」の方が先にきますね。負けたときもそうですし、怪我をしたときも「早く治りたい」と思いましたし。とにかく「早くトップになりたい」というのが、常にありましたからね。
赤見 :実際にトップに立つと、レースでも違うんじゃないですか? どうしても人気馬に多く乗るので、そのレースの流れの中で、自分でレースを作るようになってくると思うんですが?
戸崎 :その辺は、いつも変わらないのかもしれません。その馬の力を発揮できる一番良いレースを心掛けていますし、そうしようと思って乗っていますので。そういう意味では、特別なことはないですね。
赤見 :中央に行って、また内田(博幸)さんが近い存在になるわけじゃないですか。意識はされますか?
戸崎 :う〜ん、また一緒に競馬に乗れるというのはすごく良かったですし、楽しみな部分はありますけど、意識というのは特にしていないです。「自分に勝つ」ということで、他の人というよりも自分との戦いだと思っています。
赤見 :そういう思いは、圭太さんは強そうですよね。常に「自分に勝つ」っておっしゃっていますもんね。
好きな言葉は「自分に勝つ」
戸崎 :強いのかどうなのかは分からないですけど、でも、自分に負けてしまうと勝負を挑んでも何もならないと思いますので。だから「自分に勝つ」というのがすごく好きな言葉で、常に心の中に持っていますね。
赤見 :最後に、地方・中央を越えて、競馬ファン全体にメッセージをお願いいたします。
戸崎 :地方競馬で培ってきた技術や経験を、舞台は変わりますが、中央競馬で思う存分に発揮する戸崎圭太を常に見ていただきたいですし、応援していただきたいと思います。競馬を取り巻く状況が今はあまり良くないところがあると思いますので、競馬を盛り上げて、少しでも力になれたらなと思います。
赤見 :ちなみに、「ここだけは誰にも負けない」ところを挙げるとしたら?
戸崎 :ここだけは負けない? 礼の仕方!!
赤見 :そこは間違いなく完ぺきです! じゃあ、中央に行ってもパドックで見てくれと。
戸崎 :そうですね。これからも益々気を引き締めて、頑張っていきたいと思います。(了)
◆次回予告
次回の「おじゃ馬します!」は特別編。戸崎騎手の恩師・川島正行調教師の独占インタビューを公開します。年間勝利数二桁だった戸崎騎手が、ピーク時には387勝をも叩きだす南関不動のトップジョッキーに。そこに隠された、知られざる師弟のエピソードとは。公開は3/25(月)12時、ご期待ください。
◆戸崎圭太
1980年7月8日生まれ、栃木県出身。1998年に地方競馬教養センターを卒業し、公営・大井で騎手デビュー。2008年2009年、2010年2011年で全国リーディング獲得。2005年からは中央へも参戦し、2010年の武蔵野Sで重賞初勝利。2011年リアルインパクトで安田記念を制し、GI初勝利を飾る。2013年、3度目の挑戦でJRA騎手試験に合格。同年3月1日付けでJRA所属となった。