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血統の常識に逆らって誕生する名馬

  • 2013年05月31日(金) 12時00分
 関東馬限定のPOGに参加している。例年だと、おいしいところは関西馬がほとんどさらっていくので、大勝ちも、大負けもない。家庭麻雀のような平和なPOGで収まる。

 ところが、昨年は様子が違った。ダービーこそ関西馬が上位を占めたが、それまでのクラシック戦線はロゴタイプ、アユサン、コディーノ、ヒラボクディープら関東馬が大健闘。おかげでPOGは平和ムードが吹っ飛び、修羅場と化した。

 逃げる者はいなかったが、もう金輪際やらないと脱落する者が出る始末。そんな中で行われた今年のドラフトは、妙に目が血走っている者が多く、最後までギスギスした雰囲気だった。

 このPOGは今年で28回目になる。まだPOG本の類は1冊もなく、POGという名すらなかった時代から、仲間内で和気あいあいとやってきた“老舗”だ。だが、今年の2歳世代も関東馬が強いようなら、ちょっと考え直さなければいけない。

 POGが殺伐とした銭儲けの場と化しては、本来の楽しみが薄れる。ただ、今年は関西馬がまず巻き返すだろうから、それほど心配はしていない。元の平和なPOGで収まると思っている。

 それはそうとダービーを勝ったキズナ。母のキャットクイルが20歳のときの仔だ。JRA提供の「競馬ミニデータ」によると、1984年のグレード制導入以降、クラシック馬の母としては最高齢だという。

 GIに拡大しても、1995年のマイルCS、1996年の安田記念を勝ったトロットサンダーの母、ラセーヌワンダと並ぶタイ記録。19歳時の出産としては、ダンツシアトル、ダイタクヤマト、タップダンスシチー、ピンクカメオの母がいるが、20歳はさすがに少ない。

 血統の常識は、確率で成り立っている。しかし、名馬はそんな常識に逆らって誕生してくるもの。大事な宝物が、手からするりとこぼれ落ちないようにしたい。

血統評論家。月刊誌、週刊誌の記者を経てフリーに。著書「競馬の血統学〜サラブレッドの進化と限界」で1998年JRA馬事文化賞を受賞。「最強の血統学」、「競馬の血統学2〜母のちから」、「サラブレッド血統事典」など著書多数。

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