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注目のヨハネスブルグ、その魅力と課題

  • 2013年06月21日(金) 12時00分
 新種牡馬紹介の第2回目は、84頭の血統登録数を誇るヨハネスブルグ。アラジ以来となる史上2頭目の欧州2歳チャンピオン、米2歳チャンピオンを同時受賞したワンダーホースだ。

 3歳時が不振で株を落としたが、ヨハネスブルグの血統的な魅力は、近親に成功種牡馬のテールオブキャット、プルピットがいる点にあるだろう。ともにGIIどまりの競走成績ながら、種牡馬となるや大成功し、前者はストームキャット系の、後者はシアトルスルー系の発展に貢献している。

 確かにヨハネスブルグも、海外においては水準級以上の種牡馬成績だ。2013年6月20日現在、北米、欧州、オセアニアで7世代(現2歳を含めると8世代)が走り、グレード&グループレースの勝ち馬は22頭。その内訳は、GI4頭、GII8頭、GIII10頭だ。

 3〜4歳時の重賞勝ち馬は延べ14頭。単なる早熟血統でないことは、この数字がはっきりと示している。さらに1600〜2000mの重賞勝ち馬も延べ12頭。意外に距離をこなし、ダートよりも芝で活躍が目立つのが特徴だ。長距離は難しいが、マイルや中距離のGIなら狙えるだろう。

 配合的にはミスタープロスペクター、ノーザンダンサーがクロスする重賞勝ち馬が多い。ただし現在の欧米のサラブレッドは、この二つの血統がほとんど入り込んだ状況。目をつぶって配合しても、自然にこのクロスができてしまうから、強調すべき事例にはならない。

 父系がストームキャット系という点では、サンデー系牝馬との相性が見込めそうだ。今春のクラシック戦線でキズナ(ダービー)、アユサン(桜花賞)らが活躍したのは周知のとおり。サンデー系とストームキャット系の相性の良さは、なかなかのものだ。

 しかし、課題がないわけではない。日本軽種馬協会が導入し、種付料が安く設定されているため、配合牝馬の質にバラつきがあるのがその一つ。そのぶん民間に比べて大きなハンデを抱える。ただ力のいる芝は合っている。洋芝で行われる北海道の2歳戦で、可能性の片鱗を見せておきたいところだろう。

血統評論家。月刊誌、週刊誌の記者を経てフリーに。著書「競馬の血統学〜サラブレッドの進化と限界」で1998年JRA馬事文化賞を受賞。「最強の血統学」、「競馬の血統学2〜母のちから」、「サラブレッド血統事典」など著書多数。

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