名馬だからといって、種牡馬となって成功する保証はどこにもない。ホースマンたちはサラブレッドの血統のきまぐれに、過去から翻弄され続けてきた。
だが、革命的な種牡馬が誕生した場合は違う。その影響力は後継種牡馬だけにとどまらず、孫、ひ孫の代までも及んでいくから、これほど有難い血統もないことになる。
ただし、孫、ひ孫の代に移るにつれて、成功の確率は落ちていく。大成功する種牡馬が出る一方で、名馬が期待を裏切る事例も増える。おそらくサンデーの血もその道をたどるだろう。日本ではディープインパクトを筆頭に、まだサンデー産駒の後継種牡馬が働き盛り。それらを相手に戦わなければならないわけだから、なおさら大変だ。
サンデーの孫の種牡馬たちが、それをどう克服していくか。今夏、新種牡馬デビューしたディープスカイの動向は、将来の血統勢力図を占う意味においても、重要な意味合いを持っている。
競走成績を詳しく書く必要はあるまい。NHKマイルC、ダービーを連覇したスピード、瞬発力、スタミナは素晴らしかった。父アグネスタキオンのスピードと、母の父チーフズクラウン、母系のスタミナがうまく融合して生まれたのがディープスカイだ。
4代母のミスカーミーは名牝系中興の祖で、その子孫からはクリスエヴァート(CCAオークス)、ウィニングカラーズ(牝馬のケンタッキーダービー馬)、チーフズクラウン(名種牡馬)ら多数の大物が出ている。
その母系に再びチーフズクラウンを配合して、ミスカーミーの3×4で生まれたのが母のアビだ。同じ母系を塗り重ねた「同血クロス」で、このあたりは名馬にして名種牡馬のエルコンドルパサーを連想させる。
繋養先が社台スタリオンステーションではなく、アラブ資本のダーレージャパン・スタリオンコンプレックス。配合牝馬は日高の牧場が中心で、確かにこの点ではハンデを抱えている。だが、種牡馬として面白い要素を持っていることは間違いない。日高の救世主となってほしいものである。