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再度、佐賀の条件重賞

  • 2013年07月05日(金) 18時00分
 たしか昨年も一度指摘したことなのだが、毎週のように行われるようになった佐賀競馬の重賞が、相変わらずよろしくない。重複する部分もあるが、あらためて指摘しておきたい。

 昨年10月からJRAのIPATで地方競馬の馬券も買えるようになり(地方競馬IPAT)、地方競馬の各主催者ではできるだけ馬券が売れるよう、さまざまに対応を行なっている。そのひとつで問題なのが、重賞の格上げ・新設だ。

 地方競馬IPATでは、「基幹競走」を決定し、JRA非開催日は基幹競走施行競馬場を含めて最大6競馬場まで、JRA開催日は基幹競走施行競馬場を含めて最大3競馬場までの馬券が発売される。

 この「基幹競走」の定義は、JRA非開催日については「ダートグレード競走」及び「1着賞金1000万円以上の重賞競走」、JRA開催日については「重賞競走」となっている。そのため、主に週末に開催している岩手や佐賀などでは、地方競馬IPATの開始とともに重賞競走が一気に増えた。

 岩手に関しては、これまでも“オープン”として行われてきた特別を重賞に格上げという対応がほとんどなのでまだ常識的だが、佐賀では単なる条件特別を、いわば自称の“重賞”として乱発している。たとえば7月6日に行われる文月賞がそれで、出走馬の格付けはすべてB級だ。

 今回あらためて取り上げようと思ったのは、この4月からは、その佐賀のB級重賞のレース名のうしろに「オープン」という表記をつけるようになったことだ。4月以降、開催ごとに、佐賀桜花賞、佐賀皐月賞、初夏賞、夏至賞、そして今週の文月賞という重賞が行われているが、それらの出走馬はいずれもB級に限定されている。にもかかわらず、地全協の公式サイトの出馬表や、そのほか地方競馬の馬券発売を行なっている民間会社のサイトの出馬表でも、同じように「オープン」という表記がつけられている。

 日本の競馬で「オープン」といえば、格付や収得賞金(または番組賞金)で上限を設けないレースを意味するのが常識だろう。この佐賀のB級重賞の「オープン」という表記は、いったいどういう意味でのオープンなのか。

 佐賀競馬の公式サイトでは、従来までの重賞を「S1」、条件からオープンまで含めて従来の特別を新たに重賞としたものを「S2」と表記しているようだが、地全協のデータベースでは区別なく重賞扱いとなっている。

 それで問題になるのは、記録の継続性だ。競馬は記録のスポーツとも言われる。馬のみならず、騎手や調教師も、「重賞◯勝」のように記録を示すことは、ひとつの勲章でもある。その記録の定義が、昨年10月以降、佐賀ではまったく変わってしまった。たとえば重賞を勝ったことがない馬や騎手がB級重賞を勝ったからといって、それを「重賞初制覇」と言っていいものかどうか。佐賀競馬の関係者も、そうしたことには戸惑いを感じているようだ。またセリ名簿のブラックタイプでは、地方競馬の重賞勝ち馬も太字で表記されるが、そうしたところでもこのB級重賞では混乱が起こることは間違いない。

 ちなみに地方競馬IPATの「基幹競走」の定義には、「1着賞金500万円以上の競走」(JRA非開催日)、「準重賞競走」(JRA開催日)、「シリーズ競走」(JRA非開催日、開催日とも)も基幹競走の対象となることがあります。という但し書きもある。そうであれば、佐賀のS2重賞(できれば岩手の格上げ重賞も)は、準重賞として基幹競走にすることはできなかったものか。ぜひとも再考を願いたい。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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