グレイソヴリン系は意外性の宝庫で、父系を今日に伝える重要な役割を果たした種牡馬には、一流半、二流の競走馬だったものが多い。
日本でも、古くはアローエクスプレスがその代表例。朝日杯3歳Sを勝っているが、クラシックは無冠に終わり、古馬のタイトルも取れなかった。しかし、種牡馬となるや大成功を収め、日本リーディングサイヤーにまでのぼりつめた。
内国産種牡馬が冷遇され、三冠馬のシンザンといえども配合牝馬に恵まれなかった時代である。そんな厳しい冬の時代にあって、内国産種牡馬の道を切り開いたアローエクスプレスの功績は計り知れない。
シービークロスもまたグレイソヴリン系の意外史を飾る馬だ。タイトル勝ちがなく、ただ同然の種付料でスタートしたが、タマモクロス(天皇賞・春秋連覇、年度代表馬)を筆頭に、数多くの重賞勝ち馬を送り出す成功を収めている。
日本リーディングサイヤーに輝いたトニービンも、父のカンパラはGI勝ちのないマイナー種牡馬だった。そんな父から凱旋門賞馬が誕生。さらには日本リーディングサイヤーに輝いたのだから、トンビがタカを生むとはこのことである。
トニービン産駒で1勝馬のミラクルアドマイヤから、名マイラーのカンパニーが誕生したのも、グレイソヴリン系のお家芸と考えれば、取りたてて驚くことではない。
ジャングルポケットがトニービンの後継では、すでに成功している。それを援護射撃したのはサンデー系牝馬たち。「サンデー×トニービン」が見せた相性の良さは、次世代にも引き継がれている。
カンパニーにもサンデーの血は入っていない。しかも、社台SSに繋養されたことで、一級のサンデー系牝馬を相手にできる有利さがある。成功のお膳立ては整っていると言えるだろう。非サンデー系の旗手となり、血統の新たな意外史を切り開いてもらいたい。