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名牝ベガの血を継ぐハープスター

  • 2013年08月30日(金) 12時00分
 先週の新潟2歳S。ハープスターが後方から弾けるように突き抜けて2連勝を飾った。残り100mからは他馬の脚がまるで止まったかのよう。有力馬の本格デビューは秋以降だが、桜花賞候補の1頭に躍り出たことは間違いない。

 母系のアンティックヴァリュー系は、名牝ベガ(桜花賞、オークス)、その仔のアドマイヤベガ(日本ダービー)、アドマイヤドン(JBCクラシック3回、朝日杯FS)でおなじみ。

 ハープスターの母ヒストリックスターも名牝ベガの仔だが、競馬には使えず不出走のまま繁殖入り。3番仔に出したのがハープスターだった。しかし、繁殖成績が順調だったとは言いがたい。

 初仔で現4歳の全兄ピュアソウルは2勝しているが、下級に低迷。2番仔で父がネオユニヴァースの現3歳、ヒストリックレディは不出走に終わっている。

 この不出走だった母の繁殖成績が、ディープインパクト産駒としては異例の早使いとなったのだろう。換言すれば、陣営がここまで走るとは思っていなかった節がある。

 サンデーサイレンスの素質馬がそうであったように、ディープインパクトの素質馬も、必要以上にがむしゃらに走る。未完成の2歳や3歳の春は、それゆえに故障で戦線離脱したり、才能の芽をみずから摘んでしまったりする。

 だから陣営はディープインパクト産駒のデビューを遅らせる傾向にあるし、ローテーションにもナーバスになっている。ハープスターも母が活躍馬であれば、あるいは上の全兄や半姉が非凡な走りを見せていたならば、こんなに早くデビューさせることはなかっただろう。

 果たして、新潟2歳Sの圧勝が吉と出るか凶と出るか。ゆったりとしたローテーションを組めるにしても、来年の桜花賞はまだ8か月も先の話。そこまでの体調、馬体の維持が大変になってくる。第二のジョワドヴィーヴルにならないことを祈りたい。

血統評論家。月刊誌、週刊誌の記者を経てフリーに。著書「競馬の血統学〜サラブレッドの進化と限界」で1998年JRA馬事文化賞を受賞。「最強の血統学」、「競馬の血統学2〜母のちから」、「サラブレッド血統事典」など著書多数。

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