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停滞する欧州血統

  • 2013年09月13日(金) 12時00分
 今週、いよいよ凱旋門賞に向けて、オルフェーヴルがフォワ賞に、キズナがニエル賞に出走する。帯同馬に蹴られて鼻出血したオルフェーヴルは、相変わらず人騒がせな馬だ。しかし、宝塚記念の出走を取りやめた肺出血でなくてよかった。

 順調そうだが、目標はあくまでも次の凱旋門賞。馬場の適性と能力は、昨年のフォワ賞と凱旋門賞で実証しているのだから、むりに勝つ必要はない。フォワ賞を勝ったところで、何の勲章にもならないし、賞金も安いのだから、本番前のひと叩きでいい。

 キズナも競馬週刊誌によると、「想像していた以上に順調にきている」と佐々木晶三調教師が語っている。オルフェーヴルと違って、こちらは未知の体験。ニエル賞のレースぶりが注目されるが、凱旋門賞は3歳馬が背負う斤量が軽いのが魅力。軽くクリアして本番に臨んでもらいたい。

 陣営が「順調そのもの」と吹きまくり、凱旋門賞で大敗するのが過去の常だった。だが、近年はそうでもなくなっている。素直に話を信じることにしよう。

 日本馬のレベル、日本の調教技術、遠征ノウハウは向上が著しい。その一方で、欧州馬や北米馬は停滞どころかレベルダウンしている。でなければ、ナカヤマフェスタが凱旋門賞で2着に入ったりはしない。

 ノーザンダンサー、ミスタープロスペクター。この2大血脈が欧州や北米の主流サラブレッドにひととおり入り込み、クロスがいくつもひしめくのが現状。過去、主流血統がこういう状態に陥ったときは、必ずそれ以外の血統から革命の使者が誕生したものだが、今のところその気配はない。

 オルフェーヴルもキズナも、凱旋門賞を勝ったら欧州で種牡馬入りすればいい。日本で種牡馬入りしても、そこに偉大なディープインパクトが立ちはだかっている。割って入るのは容易ではない。

 しかし、新天地にはサンデー系の強力なライバルはなく、無限の畑(配合可能な繁殖牝馬)が広がっている。停滞する欧州血統に活力を吹き込むとすれば、サンデーの血しか考えられない。オルフェーヴルやキズナに、欧州で血統革命を起こす資格は十分にあると思っている。

血統評論家。月刊誌、週刊誌の記者を経てフリーに。著書「競馬の血統学〜サラブレッドの進化と限界」で1998年JRA馬事文化賞を受賞。「最強の血統学」、「競馬の血統学2〜母のちから」、「サラブレッド血統事典」など著書多数。

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